地元・松鳳山3大関撃破 師匠絶賛のお尻で快進撃

[ 2012年11月16日 06:00 ]

稀勢の里(右)を引き落としで破る松鳳山

大相撲九州場所5日目 福岡国際センター

(11月15日)
 地元、福岡県出身の平幕・松鳳山が土俵際の引き落としで稀勢の里を撃破し、今場所3人目の大関狩りを成し遂げた。場所前に特訓したもろ差しからの攻めが威力を発揮。幕内で2番目に軽い138キロの小兵が、地元の大声援を背に快進撃を続けている。全勝は横綱・白鵬、関脇・豪栄道に平幕の豊ノ島、千代大龍の4人。
【取組結果】

 汗だくで大銀杏(いちょう)は激しく乱れ、何度も肩で息を吐いた。疲労困憊(こんぱい)の松鳳山は、地元の温かい拍手と歓声を浴びて花道を引き揚げた。支度部屋に戻っても興奮は収まらない。「とにかく必死でした。秋巡業の稽古では歯が立たなかったのに…。他の場所は大関(の方が声援が多い)ですけど、九州だと五分五分なんで違います」。力強く背中を押してくれた場内の声援に感謝した。

 立ち合いで大関に左をねじこまれ、圧力で土俵際まで攻め込まれた。序盤は相手の攻めを懸命に残すだけ。そんななかでも狙いはただ一つ、もろ差し。「とにかく(相手の)中に入る」。138キロは幕内では日馬富士に次ぐ2番目の軽量。その特性を生かすために磨いた技だった。場所前の春日野部屋への出稽古では1メートル92の同期・栃ノ心、出稽古に来ていた2メートル2の琴欧洲ら、大きい相手に試行錯誤した。この特訓の成果で二本差しを果たし、大関を慌てさせた。強烈な右おっつけで最後は振りほどかれたが、まだ諦めない。「思い切って回り込んでやろう」。前のめりの体勢で土俵に残ると、勢い余った相手は土俵下に転がり落ちていた。

 秋場所4日目に琴欧洲から大関戦初勝利を挙げて自信をつけ、今場所はすでに3大関を撃破。敢闘精神を評価する投票も5日間中3日で首位と、ファンの心もつかんでいる。審判長として土俵下で見守った師匠の松ケ根親方(元大関・若嶋津)も「ビックリした。超上出来。体、特に尻の周りが大きくなって中に入っても動ける」と目を細めた。

 新しい技術習得に加え、3キロ増量でめきめきと地力強化。6日目の白鵬戦は師匠から「(勝つのは)無理」と宣告されたが、再びアッと言わせる勢いが今場所の松鳳山には備わっている。

 ◆松鳳山 裕也(しょうほうざん・ゆうや、本名=松谷裕也)1984年(昭59)2月9日、福岡県築上(ちくじょう)郡築上町生まれの28歳。大分・宇佐産業科学高から駒大。国体成年Aで準優勝の実績を残し、松ケ根部屋に入門。06年春場所に初土俵を踏み、10年夏場所に新十両に昇進した。野球賭博に関与し2場所の出場停止処分を受けるも、幕下からはい上がり11年九州場所に新入幕。得意は突き、押し。1メートル77、138キロ。血液型A。

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