把瑠都 13連勝で悲願の初優勝!母の言葉で変身

[ 2012年1月21日 06:00 ]

<大相撲初場所13日目>琴奨菊を下手投げで下す把瑠都

大相撲初場所13日目

(1月20日 両国国技館)
 エストニア出身の大関・把瑠都(27=尾上部屋)が悲願の初優勝を飾った。12戦全勝で迎えたこの日、琴奨菊を豪快な下手投げで下し、全勝をキープ。2差で追っていた横綱・白鵬が結びで琴欧洲に寄り切られ2敗力士がいなくなり、2日を残して優勝が決定した。欧州出身の優勝力士は08年夏場所の琴欧洲以来2人目。20場所連続で賜杯を手にしてきたモンゴル勢の一角を崩し、春場所(3月11日初日、大阪府立体育会館)での綱獲りに挑む。

 目にはうっすらと光るものがあった。結びの3番前に琴奨菊を下し連勝を13に伸ばした把瑠都は、支度部屋で白鵬の取組を見守った。琴欧洲が横綱を寄り切るまさかの展開に「エッ」と驚きの声。初体験の優勝インタビューでは「あまり言葉にならない。ドキドキしています。夢だった」と声を詰まらせた。

 自慢の怪力で優勝をたぐり寄せた。琴奨菊に左を差され頭をつけられるも、右上手をつかむと大根を引き抜くように171キロをつり上げ、投げ捨てた。「これが安全。でも重かった」。前日の稀勢の里戦は立ち合いの変化で帰れコールを浴びたが、どうだと言わんばかりの強さを誇示した。

 初優勝へ道を開いたのは、最愛の母ティーナさん(49)の言葉だった。10年夏場所で大関に昇進。横綱昇進は時間の問題と言われながら、序盤戦のつまずきが目立ち、低迷した。昨年には八百長問題で兄弟弟子3人が角界を追放され、師匠の尾上親方(元小結・浜ノ嶋)が酒気帯び運転で処分を受けるなど部屋の不祥事が相次いだ。そして、日本人の後輩大関が2人誕生し、影が薄くなりかけた場所前、近況報告のための電話で、めったに相撲の話をしない母から「迷わないで」と励まされた。その言葉を反すうして集中力を維持した。04年の来日から8年。国技館の優勝額32枚が初めて外国出身力士で埋め尽くされた場所で、欧州出身としては2人目、史上98人目の優勝力士として名を刻んだ。

 悲願の賜杯を手にし、3月の春場所は綱獲りに挑戦する。若手時代は「横綱は大変だから大関がいい」と話していたが、今は「もう一つ上がありますね」と話す。「夢みたいなこと。人間、やればできるもんですね」。大きな体に似合わない、ひょうきんな笑顔が絶えることはなかった。

 ◇エストニア共和国 ヨーロッパ北東部でバルト海東岸に南北に並ぶバルト三国の1つ。首都はタリン。1944年にソ連に併合されたが、91年に独立を宣言し、同年には国連にも加盟した。近年は観光産業が盛んで、観光客数は500万人を超えるといわれる。通貨はユーロ。人口約134万人。公用語はエストニア語。

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