特別調査委“厳罰”明言…琴光喜ら角界追放も

[ 2010年6月23日 06:00 ]

厳しい表情で会見に臨む陸奥生活指導部長(中央)、八角生活指導部副部長(右)の横で、記者の質問にこたえる特別調査委の望月弁護士(左)

 大相撲の賭博問題を調査する特別調査委員会の望月浩一郎委員(53=弁護士)は22日、両国国技館で会見を行い、暴力団とのかかわりが指摘される野球賭博に関与し、特に悪質と判断された協会員は、「除名」または「解雇」の厳罰に処する意向を示した。7月4日の臨時理事会後にも発表する方針で、大関・琴光喜(34=佐渡ケ嶽部屋)、大嶽親方(42=元関脇・貴闘力)らが、角界から追放される可能性も出てきた。また、幕内・垣添(31=武蔵川部屋)ら新たに3力士の野球賭博への関与も判明。武蔵川理事長(62=元横綱・三重ノ海)の弟子の関与は雅山(32)に続いて2人目となった。

 野球賭博に関与した協会員の処分に関し、相撲協会側が初めて「除名」や「解雇」といった厳罰を下す意向を示した。特別調査委員会の望月委員がこの日、両国国技館で現状を報告。協会の実態調査で野球賭博への関与を認めた29人の処分内容について「中には協会に残れないという処分も視野に入れている」と、「除名」や「解雇」など角界からの追放を意味する重い処分を下す意向であることを明言した。
 特別調査委員会はこの日から5人前後の力士を事情聴取するなど本格的な調査を開始。望月委員によると厳罰処分の対象となるのは「反社会的勢力とかかわる賭博を中心となってやっている人物」で、ほかにも賭け金の額や悪質性などが判断材料となる。また親方、横綱、大関などの協会員の模範となる立場の人物については「他の人より処分は重くなる」と説明した。
 特別調査委は今後も処分の対象者を一定の基準に沿って分類する“仕分け”を行い、7月4日の臨時理事会までに処分内容や名古屋場所の開催是非などを協会に提言する。除名や解雇など重い処分の対象者については、臨時理事会後にも発表するよう協会に求めるという。
 これで一連の野球賭博問題の中心人物とされる三等床山の床池(29=阿武松部屋)に加え、責任ある立場にありながら野球賭博に関与した大関・琴光喜、大嶽親方、時津風親方(36=元幕内・時津海)らが、協会から追放される可能性も出てきた。望月委員は最後に「野球の“黒い霧事件”は(八百長に関与した選手が)永久追放になった。相撲も甘い対応はしない」と、かつてプロ野球界を揺るがした不祥事を引き合いに出して、暴力団とのかかわりを徹底的に排除していく不退転の決意を示した。
 野球賭博への関与が明らかになった力士は、この日判明した嘉風、春日錦、垣添を加えて計12人。厳罰が下される人数次第では、相撲界はまさに崩壊の危機を迎えることになる。

 ◆日本相撲協会の除名 相撲協会の賞罰規定で最も重い処分。解雇や番付降下、出場停止など相撲協会理事会で決める5段階の処分(重い順に、解雇、番付降下、出場停止、給与減額、けん責)とは異なり、親方や行司の代表による評議員会での特別決議が必要となる。出席者の4分の3以上が賛成すれば、適用される。退職金も支払われない(解雇の場合は、理事会で退職金を支払うか支払わないかを決める)。現行制度になってから除名処分を受けた者はいない。相撲協会広報部によれば、明治時代初期の1873年冬場所(11月)に角界の運営方法に不満を抱いて別団体を結成した関脇・小柳、前頭・高砂らが除名され、この場所の番付のしこ名には黒い墨が塗られている。

 ◆日本相撲協会の過去の解雇処分
 ☆無断欠勤 97年1月31日、山響親方(元小結・前乃臻)は無断で初場所を欠勤し懲戒解雇。
 ☆力士死亡 07年に時太山こと斉藤俊さんが死亡した問題で師匠の時津風親方(元小結・双津竜)が、師匠にあるまじき行為で世間を騒がせ、協会の信用と名誉を棄損したとして解雇処分。さらに08年12月18日、同問題に関与し起訴されたことで明義豊、時王丸、怒濤の兄弟子も解雇処分となった。
 ☆大麻所持 08年8月18日、若ノ鵬が大麻取締法違反(所持)の疑いで逮捕され解雇。9月にも尿検査で大麻の陽性反応が出た露鵬と白露山が解雇。09年2月には若麒麟が大麻取締法(共同所持)の疑いで現行犯逮捕されて解雇処分となった。

 ≪上申書に不備も≫望月委員はこの日、相撲協会が14日締め切りで実施した賭博に関する実態調査の上申書に不備があったことも指摘した。問題になっているのは、暴力団とのつながりが懸念される野球賭博だが、実態調査では賭博の種類や反社会的勢力とのかかわりの有無、賭け金の程度にかかわらず、あらゆる賭博への関与を申告させたことで協会が混乱。望月委員は「いろいろ交じっているから(名前を)発表しにくい」と、実名公表への影響も挙げた。また、協会執行部が捜査資料として上申書を警察に手渡したことについても「その点も、批判があっても仕方ない」とした。

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2010年6月23日のニュース