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名将・古沼貞雄氏に聞く「高校サッカーで総体&選手権2冠の難しさ」

[ 2026年1月31日 09:10 ]

古沼貞雄氏
Photo By スポニチ

 【大西純一の真相・深層】25年度の全国高校サッカー選手権は、神村学園(鹿児島)が初優勝、夏の高校総体と合わせて2冠を達成した。得点王になったFW日高元ら決定力のある選手がそろい、抜群の破壊力を見せた。

 高校サッカーで2冠はことのほか難しい。1963年(昭38)に高校総体が始まって63年たつが、神村学園が6校目だ。高校選手権6度、高校総体3度優勝の名将、元帝京高校監督の古沼貞雄さん(86)も2冠は一度も達成できなかった。その理由を古沼さんは、「人間の性(さが)で、勝つとどうしても見下ろすようになる」と分析する。夏の高校総体で優勝すると、選手は自信も付けるが、同時に心の隙もできる。すぐに高校選手権の都道府県大会が始まり、戦いながらチームを成長させなければならないが、強豪校と練習試合をしても「オレたちの方が上」という気持ちがあって、全力で勝ちに行く姿勢が出ない。メンタル面が思い通りに成長できず、その結果、良い選手がそろっていても冬の高校選手権で優勝することができないという。大学生と練習試合をすれば見下ろすことなく試合ができるが、大学生とひんぱんに練習試合を組むことは難しい。古沼さんが経験した高校サッカーの難しさだった。

 神村学園の有村監督は恩師の鹿児島実・松沢監督や国見の小嶺監督から学び、積極的に遠征して選手を鍛えた。古沼さんも遠征は積極的に実施したが、「自分たちのグラウンドばかりでは高校生は成長しない。電車やバスに乗って遠征して、刺激を受けないと」と“見下ろすこと”がないように工夫し、あえて厳しい環境にした。神村学園も昨夏の高校総体で優勝した後は積極的に遠征し、選手の気持ちが緩まないようにした。古沼さんが聞いた話では30泊もしたという。さらにプレミアリーグに昇格して力を付けたことも大きい。8年前の17年度大会では、古沼さんがアドバイザーをしている矢板中央(栃木)と高校選手権で対戦。「スコアは1-0だったが、内容的にも負ける気はしなかった」というが、今では上を行く存在になった。

 古沼さんは高校選手権の時期になると、いつも元日本代表監督のイビチャ・オシム氏が言っていたことを思い出すという。オシム氏がジェフ市原(現千葉)を指導していた時から懇意にしていて、よくサッカーの話をした。オシム氏は遠隔地の高校もスタンドでブラスバンドが応援する光景を見て、「せっかく関東に来て、1試合で帰る学校があるのはおかしいと言っていた」。4校で1次リーグを行い、上位2校で決勝トーナメントを行えば、試合数は95試合と現行の47試合の2倍となるが、選手は真剣勝負を最低3試合経験できる。選手の成長、日本サッカー界の飛躍にはプラスだ。大会期間が長くなり、大会運営費の増加、運営する役員や人員、競技場の確保など課題は多いが、検討の余地はある。次の100年へ向けて、変化してほしい。

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