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川淵三郎氏の激励受ける異色“二刀流プロ”が日本人初のサッカー・マダガスカル1部加入…田島翔って何者?

[ 2025年8月3日 15:25 ]

マダガスカル1部FCルージュに加入した田島
Photo By 提供写真

 アフリカの島国、マダガスカルのクラブに初めて加わった日本人選手がいる。

 MF田島翔、42歳。11月のシーズン開幕を前に、今夏同国1部FCルージュに加入した。過去にはアジア、欧州、オセアニア、北米、南米大陸のクラブでプレー。今回初のアフリカでついに6大陸目のクラブに加わる。代理人はいない。加入はほぼ全て自身の売り込みからチャンスをつかんできた。一体、何者なのか。
 
 北海道で生まれ育った田島が小学生のときにJリーグが発足し、V川崎(現東京V)のエースだった元日本代表FW三浦知良(現JFLアトレチコ鈴鹿)に猛烈にあこがれた。「カズさんがきっかけでサッカーを始めた」。野球少年は5年生から一転、サッカー少年になった。

 サッカー界では無名だった函館工高卒業後、プロになる夢を諦めきれず、J1札幌に電話で売り込んだ。「とにかくプロになりたかったんで。自分で動くしかなかった」。結果はもちろん「NO」だった。

 シンガポールへのサッカー留学を経て04年にJリーグ入りを目指していた発足当時のFC琉球に応募して合格した。発足に携わったラモス瑠偉氏からは「絶対にいつか報われる。大好きなサッカーのために頑張れ」と励まされた。焼き鳥をスナックに売るアルバイトなどをしながらボールを蹴った。

 その後、クロアチア2部、スペイン5部のクラブなどを渡り歩き、12年にはJ2熊本に練習参加から加入。田島の経歴の中で唯一の売り込みではない加入で、初めてのJリーガーだった。公式戦出場はなく、1年間の在籍後、フットサルへの転向もはさみながら14年にはニュージーランド1部オークランドFCに加わった。

 「サッカーを通じていろんな国の文化を知っていくのって楽しい。言葉を勉強することも楽しい。日本の常識が全く通用しなくて、日本の方が非常識なんだよ、ということもある。それがすごくおもしろい」

 異国への興味をさらに強めると、米国、韓国、サンマリノ共和国でのプレーなどを経て、昨年11月にブラジル3部ポルトゲーザ・ロンドリネンセに加わった。日本人の留学生などを仲介するダイレクターの役職も兼ねての契約だった。

 契約期間は1年間。古傷の右ふくらはぎには痛みを抱えていた。シーズンが終わればスパイクを脱ぐつもりだった。ところが自身に合う右脚のケア方法が見つかった。痛みが消えていくとともにわき上がったのは、唯一未踏だった大陸でプレーしたいという思いだった。

 「やり残していることが、アフリカ大陸でプレーすることだった。それでまずはアフリカ大陸で治安のいいところを調べた。そしたらマダガスカルが出てきた。国としても面白くて興味が沸いて。リーグを調べて、いくつかのチームに連絡をした」

 メールには自身の経歴と、マダガスカルでのプレーを望む思い、将来的にはアフリカから日本に選手を仲介する仕事をしたいという意欲を記した。

 返信が来たのは地域リーグに属するチームと同国1部のFCルージュの2つだった。FCルージュからは地元の北海道でサッカースクールを立ち上げた実績についても興味を持たれ、加入とともに下部組織設立に携わることも決まった。

 「マダガスカルは10万円あれば1年間暮らせるようなところ。お金ではなく、アフリカ大陸でやってみたいという思いが強かったので(交渉時に)年俸の話はしなかった」

 指導者を務める埼玉県川越市のサッカーチーム「F.C. STIMOLANTE」の金銭的サポートもあって成り立つが、実は田島にはもう一つの“顔”もある。

 麻雀プロだ。国内にある5つのプロ団体のうちRMUに在籍する。プロリーグ「Mリーグ」への参戦を目指し、RMUのリーグ戦などでの実績づくりに励んでいる。

 マダガスカルリーグは11月に開幕し、来年7月に閉幕。来年3月からは国内杯も始まる。田島は2、3カ月に1度は帰国してRMUの試合に参加しながら、FCルージュの重要な局面では舞い戻って参戦する予定。異例の二刀流となる。

 22年に麻雀プロに合格したとき、田島には自らアポを取り付け、会いに行った人がいる。初代Jリーグチェアマンにして麻雀のMリーグ最高顧問を務める川淵三郎氏だ。Jリーガー経験者で初めて麻雀プロになった自身に、同氏は「歴史を作れ」などと言葉を送ってくれた。

 「マダガスカル初の日本人としてタイトル獲得を目指し、クラブの発展に貢献したい。将来的には才能あるアフリカ選手をJリーグに紹介するなど橋渡し的なこともやっていきたい」

 唯一無二の道を歩む田島は、今季も夢を追う。 (波多野 詩菜)
 
 ▽マダガスカル1部 今季のリーグ戦は11月から来年7月まで。全12チームでホームアンドアウェーで行われる。優勝クラブはCAFチャンピオンズリーグ出場権を獲得。マダガスカル杯は来年3月から同7月にかけて行われ、優勝クラブはチャンピオンズリーグの下位にあたるCAFコンフェデレーションカップ出場権を得る。

 ▽FCルージュ 首都アンタナナリボを拠点とし、23年に2部優勝、24年から初のトップリーグ入り。24年マダガスカル杯4強、25年同8強。

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