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なでしこジャパンが再び咲くために―― 7月W杯へ元代表DF・鮫島の展望 攻撃の要は藤野、守備は熊谷

[ 2023年6月7日 04:20 ]

元女子日本代表DF・鮫島彩
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 女子サッカーのW杯オーストラリア・ニュージーランド大会は来月20日に開幕する。FIFAランク11位の女子日本代表「なでしこジャパン」は11年ドイツ大会以来、3大会ぶりの世界一に挑戦。11年大会の優勝メンバーでW杯3大会連続代表だったDF鮫島彩(35=大宮)が注目のなでしこを挙げ、大会を展望した。「More W杯」では鮫島を皮切りに、バスケットボール、ラグビーのW杯出場者が3日連続で登場し、各日本代表にエールを送る。

(1)キーパーソン

 勝ち上がるための鍵を握る選手として、まず、守備では11年W杯で世界一の経験もある熊谷紗希選手が要だと思います。15年W杯メンバーでもあり、大宮の同僚の有吉(佐織)らと集まっているときに電話して、話したりもします。主将の彼女がチーム全体を統率している部分も多い。守備面の課題に関しては、紗希が中心となって話し合っているはずなので、本番までの1カ月半で必ず修正してくると思います。

 攻撃面では日テレ東京Vの藤野あおば選手が面白い。WEリーグでマッチアップした経験がありますが、常にマークを取りにくい位置にポジショニングしてくるし、駆け引きも凄く上手です。自分でシュートまで持ち込めますし、スルーパスも出せるし、守備ではハードワークもできる。なんでもできるオールマイティーなタイプで、彼女にボールが入れば“何かしら起こりそう”と思っています。足元の技術が高いですし、個人で局面を打開してチャンスをつくってくれるのではないかと期待しています。

(2)大会の展望

 日本にとって決勝トーナメントで対戦する可能性がある、優勝4度の米国や東京五輪金メダルのカナダはもちろん強敵です。ただし、最も手ごわいのはイングランドではないでしょうか。昨年11月のスペイン遠征では0―4で敗戦。ここ数年はピッチの外からの印象しかありませんが、自分の記憶の中では一番強いチームという印象が残っています。

 身体能力が高く、個の能力に加えて組織力もあって、対戦した際には「どうやってボールを奪うんだ」みたいな感覚になりました。実際に11年大会では1次リーグ第3戦で0―2で敗れていて、15年大会の準決勝ではアディショナルタイムのオウンゴールでぎりぎり勝利しています。

 日本の選手は足元の技術が高く、太さん(池田監督)の大事にするハードワークも体現できているのではないでしょうか。なので、守備の陣形が整っているときは大きくバランスが崩れることはないと思いますが、3バックではやはり一人一人の守るスペースが大きくなる瞬間があるため、難しさも出てくると思います。シービリーブス杯の米国戦、4月の欧州遠征のデンマーク戦はともに、スペースにダイナミックに蹴り込まれて走られるパターンに苦戦していました。ロングボールにどう対処するかがポイントになると思います。

(3)W杯とは

 優勝した11年大会で印象的だったのは準々決勝のドイツ戦です。ホスト国だったので会場の雰囲気は完全にアウェーで、延長戦で日本が得点した瞬間に会場が静まりかえりました。ゴールが決まってこんなに静かになる試合があるのか、と感じました。この勝利で勢いに乗れた、と思います。

 決勝では、チームとしてこれまで積み重ねてきたものがあったので、プレッシャーがある中でも楽しみながらプレーすることができました。15年大会は分析されていた感覚はありましたが、自分たちで考えられる選手がそろっていたので、試合中も臨機応変に対応することができました。ベンチメンバーも必死に声を出し、自然と体が前のめりになるくらい、全員で戦っていました。

 W杯は真剣勝負の場で、各国のレベルが急激に上がっていますし、代表選手は日本の女子サッカー界の未来を背負っている分、プレッシャーは凄く大きいと思いますが、大舞台を楽しんでほしいです。

 一選手として日本の優勝を願っています。(元日本代表DF)

 ◇鮫島 彩(さめしま・あや)1987年(昭62)6月16日生まれ、栃木県出身の35歳。小学1年時にサッカーを始め、宮城・常盤木学園から東京電力に加入。フランス1部モンペリエ、仙台、INAC神戸などを経て、21年から大宮でプレー。不動の左サイドバックとしてW杯は11年ドイツ大会優勝、15年カナダ大会準優勝、五輪は12年ロンドン大会銀メダルに貢献した。日本代表通算114試合5得点。1メートル63、54キロ。利き足は右。

 ▽11年女子W杯ドイツ大会 佐々木則夫監督率いるなでしこジャパンは1次リーグを2勝1敗で2位突破。決勝トーナメントは開催国ドイツを延長1―0で破り、初の4強入り。準決勝はスウェーデンに3―1で勝ち、米国との決勝は死闘の末に延長2―2、PK戦3―1で制してアジア勢初の世界一に輝いた。主将のMF澤穂希が5得点で得点王と大会MVPを獲得。同年3月の東日本大震災で被災した国民に感動と勇気を与えたとして、国民栄誉賞を授与された。

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