【鹿島ジーコ氏が語るJ30周年<1>】93年の開幕ハットトリック「とても大事な意味があった」
Jリーグ30周年記念スペシャルマッチ 鹿島―名古屋 ( 2023年5月14日 国立 )
鹿島は14日、93年のJリーグ開幕節と同じ名古屋を迎え、国立競技場で「Jリーグ30周年記念スペシャルマッチ」を開催する。クラブ・アドバイザー(CA)を務めるジーコ氏(70)がこのほど茨城・鹿嶋市内で取材に応じ、Jリーグ30年の歴史や鹿島というクラブ、次の30年に向けた提言などについて語った内容を3回に分けて紹介する。
第1回は、衝撃的な開幕節のハットトリックでJリーグ人気に火を付けたジーコ氏が、日本サッカーの成長を振り返った。
――Jリーグが30周年を迎えた。
「これだけサッカーが日本国内でメディアに取り上げられるようになったことをみても、日本サッカーが発展してきているということが分かります。各クラブの環境も、とても整っているので、この30年間で各クラブがどれだけ発展してきたというのも分かると思います。審判の方にしても、選手、スタッフにしても、1つのプロとしてJリーグが成り立ってきたと感じています」
――来日当時のサッカー環境は。
「私が来日したときは、まだ住友金属が日本リーグ(JSL)2部でした。私は東京に住んでいて、東京と鹿島の往復がとても大変だったんです。それで東京の自宅近くでトレーニング場所を探していたんですけど、グラウンドを見つけることが出来ませんでした。
当時、日本の代表的なスポーツは野球、テニス、ゴルフなどでサッカーより盛んに行われていました。トレーニングする場所といったら野球場くらいしかなかったんですね。限られたスペースの中でトレーニングしていたりすると『ボールが飛んでくるから危ないぞ』というようなことを言われて、気をつけながらトレーニングしていたことを覚えています(笑い)
06年に私が日本から一時離れるとき、同じ場所でサッカーグラウンドがどれだけ作られているか数えました。もう10カ所以上作られていました。そこだけをみてもサッカーが日本国民に、日本国内に浸透しているということをすごく感じましたし、サッカーというスポーツが若い人、子どもたちにとって選択肢の一つに含まれたのかなと思いました」
――ハットトリックを達成した93年5月16日の開幕戦について。
「私個人だけのハットトリックとは思っていないんですよ。日本のプロサッカーがスタートした試合だったので、あのハットトリックはJリーグが発展していく上でも、とても大事な意味があったのではないかなと思います。
鹿島アントラーズという人口4万人の小さな町のクラブからJ1に参戦するということでも注目されていました。その中で結果を出せたのは大きかったし、対戦相手の名古屋にはリネカー(元イングランド代表)という世界的選手がいました。世界からすればリネカー対ジーコの試合。国内外で注目されていた試合でハットトリックを決められたのは世界的にも日本サッカーのためにも、鹿島という小さな町としても意味があったと思います。あと、あのとき、まだ私が現役としてあれだけのプレーができていたということにも感謝しなくてはいけません(笑い)」
――ジーコ氏にとっての93年開幕節でのハットトリックの意味とは。
「1試合に3点というのは、私自身はそこまで珍しいことではなかったんです。ブラジル代表でも、フラメンゴ時代にも3点取っていたのでそこまで大きな意味はありませんでした。ただ、何が重要だったかというと、鹿島アントラーズというクラブをサポーターの方々が信じてくれて、満員となるスタジアムを作ってくれた。あの環境でハットトリックができたことが私にとって大事だったと思います。鹿島の歴史があそこからスタートできたという意味で、私はすごく重要なハットトリックではなかったかなと思います。
また、ハットトリックという言葉も来日してから知りました。ブラジルではビッグプレーヤーが1試合に複数点とることが普通だったんです。かえって、いまはブラジルではハットトリックということが私がプレーしていたころに比べると大きく取り上げられるようになっていますよね」
――91年に来日した。日本で驚いたことは。
「来日して驚いたのは日本人の精神性ですね。自己管理がしっかりしていることでした。やはり規律正しく物事をしっかりやり通すところがあり、私はそれを日本に来て覚えました。それがあったからこそ、来日して今まで何のアクシデントもなく過ごすことが出来ているのかなと思っています。アクシデントという言葉を使いましたけど、家の中でも外に出たときもアクシデントがあるかも知れない。自転車とか自動車に乗っていてもアクシデントはあるかもしれない。だけど、そういったことが起きなかったというのは、日本の文化というか、環境というのも大きな影響があったのかなと思います。それだけ人が安心した町づくりというのが日本ではできているのかなと思っています。そのおかげで、私は大きな問題なく過ごせています」
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