森保一監督 J30年を振り返る 黎明期から選手で監督で活躍 忘れない開幕戦での幸福感
Jリーグ黎明(れいめい)期から選手、そして監督として活躍してきた日本代表の森保一監督(54)が、J30周年の節目を迎える15日を前にスポニチの取材に応じた。W杯カタール大会で世界を驚かせた指揮官はこの30年を振り返り、今後はJリーグ育ちの若手選手や日本人指導者の積極的な海外挑戦を期待した。Jリーグはきょう12日のFC東京―川崎F(国立)を皮切りに3日間「30周年記念マッチ」として開催する。
森保監督は1987年(昭62)に長崎日大高から当時日本リーグ(JSL)だったマツダ(現広島)に加入し、アマからプロへの過渡期を経験した。
「カズさん(三浦知良)がブラジルから帰国してJリーグが開幕したことで日本サッカーが劇的に変わったように思う。ただ先が全く見えず、プロとして良くなった環境を次世代につなげようと必死だった」
93年5月15日。Jリーグが誕生したことでサッカーの注目度が一気に高まった。
「自分で数えられるくらいの観客の中で試合をしたこともあったので、サッカーが現在のような人気になるとは想像できなかった。サポーターは1人でも1万人でもありがたいことには変わりないんですけどね」
開幕をきっかけに各クラブが環境整備に注力。旧マツダの施設を利用していた広島にも99年に専用練習場が完成した。
「開幕したことでサッカー専用球技場が増えたり、間違いなくハード面は良くなった。栄養サポートが充実したこともあって、自分は試合に向けて休息などオフ・ザ・ピッチの部分を意識的に取り組むようになった」
現役時代は3クラブでリーグ戦計293試合を経験。5月16日に広島スタジアム(現Balcom BMWスタジアム)で行われた開幕戦(対市原)が最も印象に残っている。
「JSL時代は読売、日産という注目試合以外、何万人規模は未経験。プロになった開幕戦で大勢のサポーター(入場者数1万1875人)に囲まれて試合をする幸せを感じた。ケガをして後半31分に途中交代したのは残念だったが、幸福感は凄く覚えている」
開幕時には多くの海外トップ選手が参戦。日本サッカー界の底上げにつながった。
「日本サッカーの強化という意味では、ジーコさん(鹿島)やベンゲル監督(名古屋)ら世界一流の選手、指導者が来たことが大きい。先日出席したFIFAの会合でも各国の監督が日本の成長を高く評価してくれた」
Jリーグから海外のクラブへ移籍する選手が増え、その経験をJリーグに還元する良いサイクルも生まれてきた。
「欧州でバリバリでプレーできる状態で帰国した大迫、酒井、長友たちから得るものはたくさんある。日本が欧州との差を埋める中で彼らから学べることは多いし、私も“国内組”なので一緒に考えていきたい」
日本代表強化の意味も含め、三笘薫(25=ブライトン)をはじめとした国内で育成された若手選手の海外移籍も推奨する。
「日本選手が50人以上海外でプレーしていることからも世界からの評価は高い。旬の選手がいなくなるとリーグが空洞化する可能性もあるが、逆にいろんな選手にチャンスがあっていい。世界に認められるのは悪いことではない」
森保監督自身も世界を経験すべきだという思いを抱く。
「欧州で指導を受けている選手に自分が個人戦術を伝える時にギャップを感じていた。(海外では)選手に戦術を伝えるためにどういうアプローチをしているのか知りたかった。(代表監督の)4年間で選手たちから世界を学んだが、欧州で実際に学びたいと思っている」
Jリーグのレベルアップのためにも日本人指導者も海外に学ぶべきだと感じている。
「日本人指導者は努力している。否定的に取られてほしくないが、W杯優勝国から学ぶことは必要だと思う。表向きの戦術だけじゃなく、戦術が具現化できるベースは何なのか。それを選手に伝えられるとレベルアップができると思う」
Jリーグの発展が日本協会の掲げる2050年W杯優勝につながることを信じてやまない。
「数値目標を取り払って、世界一に挑むことを考えてもいい。日本の目標をアジア各国は知っていて、日本は優勝できるよって言ってくれる。私自身も自信を持って、我々はできると思っていると言っていますよ」
○…反町技術委員長が11日、千葉市内で取材に応じ、30周年を迎えたJリーグへの思いを明かした。93年の開幕シーズンから選手として活躍し、引退後は指導者に転身。新潟や湘南で辣腕(らつわん)を振るった。「サッカーずくめだったので、(Jリーグが)これだけ続いているのがうれしい」。10クラブから60クラブまで拡大したことも含めて「Jの選手の経験もある人がチェアマンをやっているのも、この30年を物語っている」と感慨深げだった。
◇森保 一(もりやす・はじめ)1968年(昭43)8月23日生まれ、静岡県出身の54歳。現役時代は広島、京都、仙台でプレー。日本代表でW杯米国大会予選など35試合出場1得点。04年1月に引退。U―20日本代表コーチ、広島コーチなどを経て12年広島監督に就任しJ1で3度優勝。17年10月に東京五輪監督に就任し、コーチとして参加したW杯ロシア大会後の18年7月からA代表を兼任で率いる。21年東京五輪はベスト4、昨年のW杯カタール大会はベスト16。昨年12月、26年W杯に向け、日本史上初の続投が決まった。
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