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金子達仁が見た26人 南野を生かすには上田の役割が重要 ポストプレーこなせるのはただ一人

[ 2022年11月2日 05:10 ]

W杯カタール大会日本代表発表 ( 2022年11月1日 )

日本代表FW上田綺世
Photo By スポニチ

 最終メンバー発表を前に「サプライズはない」と予想したメディアがあった。わたしも同感だった。

 どうしてどうして。

 まず、早い段階で川島の名前が呼ばれた。個人的には若い谷を抜擢(ばってき)してほしかったが、正GKの座を争う2人にはW杯出場経験がない。精神的な重しとして川島を入れたという判断も理解できる。サプライズ、まるでなし。

 柴崎が入ったのには、正直、少しばかり驚いた。とはいえ、欧州遠征での起用法を見れば、彼が外れると見る方が少数派だろう。実際、前日のスポニチの予想では「有力」とする○が打たれていた。

 ちなみに、前日のスポニチでは7人の選手に「微妙」の△がついているが、その中からは2人の選手が最終メンバーに名を連ねることになった。山根と相馬。個人的には日本代表候補の中でも屈指の考える力、知性を感じさせてくれていた相馬が入ったのはうれしかったが、サプライズというのとは少し違う。そう来たか。そんな感じ。

 布石が打たれたのは南野の名前が呼ばれた時だった。ああやっぱりと思ったわたしは、「これで大迫も確定か」と思った。前線でタメをつくれる大迫がいれば、南野はまた輝ける。多くの専門家がそう見ていたし、何より、先週末の森保監督が視察に訪れたのは、川崎F対神戸の一戦だった。スポニチ予想が大迫に◎を打ったのも、森保監督の行動と無関係ではあるまい。

 ところが、発表が進めど進めど、大迫の名前が呼ばれない。原口の名前も呼ばれない。それどころか、久保の名前まで呼ばれないまま、メンバー発表は最後の一人になってしまった。

 大迫か、原口か、それとも久保か。旗手や古橋の可能性もあった。一昔前であれば、無条件で代表のレギュラーを確約されるキャリアを持った選手たちが、当落線上に立たされていた。

 最後に名前を呼ばれたのは、久保だった。

 軽く放心状態気味になりながら、まずわたしが思ったのは「これで上田の役割が重要になった」ということだった。

 スペースに飛び出すタイプの選手ばかりだと、南野は持ち味を発揮しにくい。他の選手以上に、相棒との相性が大きな意味を持つ。そして、今回選ばれたメンバーで当てはまりそうなのは、上田しかいない。相手の攻撃の起点をつぶしにいくスタイルには合わないが、自陣から組み立てていくのであれば、上田と南野のコンビが生きてくる可能性はある。

 従来のW杯であれば、最終メンバーの発表は、シーズンがクラブレベルから代表レベルに切り替わるスイッチでもある。だが、今回は違う。J1は優勝や残留のかかった極めて重要な1試合が残っており、欧州でもリーグ戦は行われる。

 つまり、ここからまたケガ人による入れ替えを強いられることは十分に考えられる。というより、26人全員が何事もなくカタールに入れる可能性の方が、むしろ小さいかもしれない。まだ、すべてが決したわけではない、というのが率直な感想である。

 発表に先立ち、協会の反町技術委員長は「ベスト8以上を目指す」と明言した。ベスト8、ではない。ベスト8以上、である。強敵との戦いを前に、彼らは退路を自ら断った。

 鳥肌が、立った。(スポーツライター)

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2022年11月2日のニュース