川淵三郎氏、Jリーグよ欧州に肩並べて 日本サッカー協会創立100周年「キャプテン」の回顧と提言
日本サッカー協会は10日、創立100周年を迎える。1921年に大日本蹴球協会として設立。ここまで1世紀にわたって、さまざまな足跡を残してきた。選手、代表監督、Jリーグ初代チェアマン、日本協会会長とサッカー界を先導してきた川淵三郎相談役(84)が100年を振り返り、未来への提言をスポニチに寄せた。
日本サッカー協会100年。私は1936年生まれで、高校からサッカーを始めたので、随分長い間、日本のサッカーに関わってきた。人生の大部分を占めているだけに、感慨深い。
この30年は、Jリーグができて、子供たちの将来なりたい職業の上位にプロサッカー選手が入るようになった。歴史を振り返れば、64年東京五輪の前にデットマール・クラマーさんが来て指導していただいたことで、日本のサッカーが自立するきっかけになった。クラマーさんの教えから、のちにJリーグができ、選手育成や指導者養成などさまざまな環境が整備され、サッカー界は大きく変わった。そういう意味ではクラマーさんが一番の恩人、100年の歴史の中で最も大きな存在だろう。
80年12月のW杯スペイン大会のアジア予選で日本代表監督を務めたが、これは大変だった。「このままでは日本のサッカーの先がない」と思い、選手を25歳以下で編成した。「同じお金を使うなら若手に」ということだ。今ではとても考えられないことだが、その頃はマネジャーもおらず、スタッフは私と、急きょ西ドイツ留学から戻してコーチになった森孝慈(たかじ)だけ。香港の空港に着いたら凄い人数のマスコミがいて、同じ飛行機に有名人でも乗っていたのかと思ったら、その対象は私たちで、驚いたものだ。記者会見も通訳なし。よくやれたと思う。
DF越田剛史が足を骨折してしまい、私が病院に連れていって医者に状況を説明した。DF都並敏史が通算警告2枚で出場停止になり、規律委員会に出向いて英語で説明したが、いま思えば、そんなに英語も話せないのに度胸だけで切り抜けた。人間はいざとなったら何でもできる。その頃と比べると隔世の感がある。
Jリーグをつくるときはラモス(瑠偉)以上の選手は出てこないと思っていたが、そのとき感じていたことと、今の日本の立場は大きく変わった。これだけ多くの選手がヨーロッパで活躍するとは想像できなかった。日本代表のほとんどが海外クラブの所属。選手も競争に勝たないといけないことは理解していて、いままでの日本代表とは全く違う。
Jリーグは世界5大リーグの次ぐらいに成長してきたと思うが、今後は世界における認知度を上げるため、選手層の厚さや強さを見せていかないと。Jリーグも欧州各国と遜色ないリーグになってほしい。そしていつか、世界のトップ選手がJリーグを目指してくるような、魅力あるリーグになってほしい。(日本協会相談役)
≪川淵氏が選ぶ日本サッカー10大ニュース≫☆協会創設 1919年、英国大使館の書記官補を務めていたウイリアム・ヘーグらの尽力により、イングランドサッカー協会(FA)からFAシルバーカップが寄贈される。これが契機となり、21年に大日本蹴球協会が創設される。
☆初の五輪 日本代表(鈴木重義監督)が36年のベルリン五輪に出場。竹内悌三主将が入村式で旗手を務める。1回戦は3―2でスウェーデンに勝利(ベルリンの奇跡)。8強に進出。
☆長期遠征 東京五輪に向けた日本代表チームの強化のため、60年に約50日間にわたる欧州・ソ連(当時)遠征を実施。デュイスブルク(当時西ドイツ)のスポーツシューレで初めてクラマー氏の指導を受ける。
☆日本リーグ創設 「日本サッカーの父」と言われたクラマー氏の提言にもあった、日本初の全国リーグとなる日本サッカーリーグ(JSL)が65年、8チームでスタートする。
☆銅メダル 日本代表(長沼健監督)が68年メキシコ五輪で銅メダルを獲得。釜本邦茂が7点を挙げて得点王。同年にFIFAが新設したフェアプレー賞も受賞した。
☆Jリーグ開幕 93年5月15日、国立競技場でV川崎(現J2東京V)―横浜M(現横浜)の顔合わせで開幕。当初は10チーム、2シーズン制。
☆W杯初出場 98年フランス大会に悲願の初出場。1次リーグは3戦全敗。
☆W杯開催 2002年にアジア初のW杯を韓国と共同開催。日本代表、ベスト16入り。大会史上初となった共催のW杯は日韓両国の関係を深めた。また、開催地やキャンプ地などで温かい交流が育まれるなど“笑顔のW杯”と称され、今なお語り継がれる。
☆なでしこフィーバー 11年女子W杯ドイツ大会でなでしこジャパンが初優勝。決勝で米国と対戦し、延長戦、PK戦の末に勝利。日本はFIFAフェアプレー賞を受賞。澤穂希がMVPと得点王。
☆五輪でも銀 12年ロンドン五輪でなでしこジャパンが銀メダル獲得。
◇川淵 三郎(かわぶち・さぶろう)1936年(昭11)12月3日生まれ、大阪府高石市出身の84歳。三国丘高からサッカーを始め早大―古河電工とFWとして活躍。日本代表入りし、64年東京五輪ではアルゼンチン戦で同点ゴール。古河電工、日本代表で監督を務めた後、初代チェアマンとしてJリーグ開幕に尽力。日本サッカー協会会長も務めた。首都大学東京理事長、日本バスケットボール協会会長、日本トップリーグ連携機構会長、東京五輪・パラリンピックの選手村村長を歴任した。
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