×

【ピッチ外のスペシャリスト】選手の体に“最適な選択”シビアに見つめるJ2京都の職人トレーナー

[ 2021年6月16日 12:36 ]

J2京都の岩城チーフトレーナー(C)KYOTO.P.S.
Photo By 提供写真

 J2京都のチョウ貴裁(チョウキジェ)監督が掲げる強度の高いサッカーを支える人物の一人だ。J2京都でチーフトレーナーを務める岩城孝次氏(56)。Jクラブで28年目を迎えるベテランは首位に立つクラブの縁の下の力持ちだ。

 かつてのトレーナーは負傷者のリハビリや治療がメインだった。だが時代は流れ、岩城氏は「健康管理や状態管理をフィジカルコーチと一緒にしていくことが重視されるようになった」と説明する。負傷する前のリスクヘッジ。言葉にすれば簡単だが、日々、シビアな判断を繰り返しているのだ。

 「難しいのは、われわれがコーチングスタッフに情報を提供することによって、選手に損得が出てくること」。例えば、ベンチ入りができるかどうかの選手が筋肉系の違和感を訴える。監督にそのまま伝えると出場機会を奪う可能性がある。逆に選手の言い分だけを通してしまうと、負傷につながるケースもある。

 岩城氏は「筋肉の張りや足首の痛みなどは個々で違うのもあり、グレーな部分が多い。監督にどう伝えるかは悩みます」という。だが「自分の中で白黒(出場可否)は決める」と判断を丸投げすることはしない。長年の経験から(1)ケガの程度を判断(2)グレーゾーンの場合は負傷リスクを想定(3)選手本人を呼んで患部の状態確認、顔色や言葉遣いなど意思を確認する。3ステップを経た上で出場可否を監督に伝えるようにしている。

 04年から15年まで所属したG大阪で、当時の西野朗監督(現タイ代表監督)に言われた言葉を胸に刻む。「全治4週間と言われて4週間で治すのは当然。最善の方法で、3週間半で復帰させるのがトレーナーの妙味じゃないか」――。京都が天皇杯2回戦で今治に3―1で快勝した9日。勝利に貢献したある選手から「岩城さんのおかげです」と感謝されたという。少し痛みを抱えていたが90分間プレーでき、痛みのぶり返しもない。それがうれしかった。

 負傷リスクを考慮しつつ、出場できる可能性を高める。これからも常に選手の体に耳を傾け、一番良い選択をしていく。

 ◇岩城 孝次(いわき・こうじ)1965年(昭40)4月13日生まれ、大阪府出身の56歳。北陽(現・関大北陽)ではGKとして活躍。83年にG大阪の前身、松下電器サッカー部に入部し、86年に引退。トレーナー業を志し、92年に松下電器の女子サッカーチームでキャリアをスタート。94年に京都のトレーナーに着任した。C大阪(01~03年)、G大阪(04~15年)を経て16年に京都にチーフトレーナーとして復帰。

続きを表示

この記事のフォト

2021年6月16日のニュース