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「サッカー辞める子が出て欲しくない」…SNSでプレー動画募集した仙台大・吉井監督の思い

[ 2020年5月21日 09:15 ]

第98回全国高校サッカー選手権大会で24大会ぶり2度目の単独初優勝を果たした静岡学園イレブン
Photo By スポニチ

 一人でも多くサッカーを続けて欲しい――。その一心で、仙台大の吉井秀邦監督(47)が動いた。全国の高校3年生から「自己PR動画」を募集。入試基準をクリアした上で、異例の“ビデオ判定”でスポーツ推薦の選考を実施するという。「今進路を不安に思っている学生も多い。サッカーを続けられる機会を広げてあげたかった」と、率直な思いを語った。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、4月26日に史上初めてインターハイの中止が決定した。例年同大会までの実績でスポーツ推薦を判断する大学も多く、高校3年生にとっては最大のアピールの場を失った。そんな状況を鑑みた吉井監督は同部のツイッターを更新。動画募集の説明をつづると、1週間で15件ほどの問い合わせがあったという。

 インターハイ中止は大学側にとっても痛手だ。相次ぐ全国大会の中止でスポーツ推薦の選考基準を失った。今年は高校3年生の視察を一切できていない現状に、吉井監督は「高校生は3年目で急激に伸びる子が多い。そういう子が埋もれてしまう可能性がある」と訴える。だからこそ、動画を募集して最低限、高校生に挑戦する機会を与えるつもりだ。

 動画は2年時のプレーを中心に4、5分程度。その中で自身の特徴や、それを生かした動画とする。ただ、動画だけでは選手の人間性を判断することはできない。団体競技とあって、規律を守れるかなどピッチ外の姿勢が問われるが、指揮官は「そこは1番近くで見てきた監督がよく分かっている」。指導者同士の密な連絡を取り合って選考する。

 高校だけでなく、大学サッカー界も揺れている。多くのJリーグスカウトが視察する8月の総理大臣杯は史上初の中止が決定。Jリーグ内定を目指す大学4年生にとっては、不安の毎日を送っている。送り出す側、受け入れる側、両方の気持ちが分かるからこそ、吉井監督は「ここでサッカーを辞める子が出て欲しくない」。一本の動画が、高校生の未来を切り開くかもしれない。(記者コラム・清藤 駿太)

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2020年5月21日のニュース