“乗れない”高木を波乗りに誘い…男気あふれる浦和・槙野の気遣い

浦和の槙野がオフの日に波乗りに誘った高木（中）。左は梅崎司

　浦和の日本代表ＤＦ槙野のチームメートへの気遣いに、感心させられた。１６日の湘南戦に１―０で勝利を収め、翌１７日はチームはオフ。今季リーグ戦フルタイム出場中で、東アジア杯３試合にもフル出場を果たした槙野は２８日ぶりの休日を使い、千葉県内へ趣味のサーフィンに出かけた。「波に乗って、Ｊリーグの波にも乗りたい」。そんなジョークも飛ばす千両役者には、海風を感じる別の理由もあった。

　それが今季、清水から加入したＭＦ高木の存在だった。仙台から移籍した“同期入団”のＦＷ武藤が一気にブレークを果たした陰に隠れ、リーグ戦１４試合でいまだ無得点。開幕から続く無敗記録が途切れた７月１９日の広島戦では、先発しながらゴールに嫌われ、人目をはばからずに号泣した。苦境に立たされている後輩の心中を察したのか、槙野は「トシも子供が生まれたばかりで大変だろうけど。でも、奥さんに無理を言って（サーフィンに）連れて行きました」と話す。「僕は泳げないんで」と話した武藤のように槙野の“オファー”を断った後輩もいるが、高木は半ば強引？に午前２時に千葉へ向かう車に乗せられた。

　そのオフ明けには「気分転換はバッチリです！」と即答した高木の表情を見て、「別の形で（高木の）奥さんをサポートしてあげないとね」と気遣っていた槙野の言葉が浮かんだ。今年２月に第１子の長男が生まれた当時、高木は「ゴールを決めることが家族の幸せにつながる」と話していた。ピッチ内で輝くことが、ピッチ外にもつながる。寡黙な後輩が思う存分、大暴れできるよう、強引にリフレッシュに連れて行った槙野の男気がほほえましかった。

　そういえば、高木の髪形がいつの間にか、両サイドを刈り上げた槙野ヘアに…。当の槙野は「武藤の次は、トシだね」と新たなキーマンに指名した。この時期に新たなヒーローが生まれれば、リーグ制覇への起爆剤になりそうだ。（大和　弘明）