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岡田監督、天国の恩師にささぐ白星

[ 2008年6月3日 06:00 ]

<日本・オマーン>前半22分、大久保が2点目を決め、ガッツポーズする岡田監督

 【日本3―0オマーン】想像を絶する重圧の中、岡田監督が“特別な試合”で結果を出した。「長沼さんには大変お世話になった。本当に腹の据わった素晴らしい方だっただけに、どうしても勝ちたかった」。出発前の宿舎で長沼さんの悲報を知らされた指揮官は、悲壮な決意で大一番を戦い抜き、天国の恩師に白星をささげた。

 岡田監督にとって、長沼さんはサッカー人生の恩師。転機には必ず長沼さんの存在があった。ユース代表だった大阪・天王寺高時代。「健さんの“チームプレー”という本を読んで勉強させてもらった」のが“出会い”だった。1浪して入学した早大ではサッカー同好会に入り「遊びでサッカーをやって、麻雀をやって、青春をおう歌していた」というが、当時、日本協会専務理事だった長沼さんに一変させられた。日本協会に呼びつけられ「お前をユースに入れたのは、日本サッカーの将来のためだ」と諭され、サッカー部入り。そこから頭角を現し、長沼さんと同じ古河電工へと進み、日本代表にまで上り詰めた。

 97年には加茂監督の後を受けてコーチから日本代表監督に昇格したが、その決断を下したのも当時会長だった長沼さんだった。一部では岡田体制を反対する声もあったが、雑音を封印。「自分が盾になるように前面に出て処理されたことが、一番印象に残っている」と感慨深く振り返った。

 指揮官は試合前日、覇気のないイレブンに対し「これからW杯予選を戦う空気じゃない。予選は甘くない。気持ちを入れ直してやってくれ」とゲキを飛ばしていたが、熱い思いは選手に通じた。20秒の黙とうの後で始まった試合では“岡田チルドレン”の中沢が先制し、大久保、中村が続いた。喪章をつけた指揮官は得点が入るたびにベンチから立ち上がり、両拳を握り締めて何度もガッツポーズをしてみせた。

 3月26日のバーレーン戦の敗戦で窮地に立たされたが、手向けの1勝で明るい兆しが見えてきた。「ヤマを越えたとは思っていないが、一歩踏み出せたとは思っている」。“オレ流”を貫いた指揮官は、自信を携えてアウェー2試合に目を向けた。

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2008年6月3日のニュース