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寺川、日本新で銅!うれし涙8年分のメダル

[ 2012年8月1日 06:00 ]

女子100メートル背泳ぎ決勝で銅メダルを獲得した寺川は感無量の表情

ロンドン五輪競泳決勝

 日本競泳陣がメダル3連発だ!!女子100メートル背泳ぎで、2大会ぶりの出場の寺川綾(27=ミズノ)が自身の日本記録を0秒25更新する58秒83で、悲願の銅メダルを獲得した。27歳のメダリストは08年北京五輪200メートル背泳ぎ銅の中村礼子の26歳を抜いて、日本の競泳女子史上最年長。また男子100メートル背泳ぎで入江陵介(22=イトマン東進)が52秒97で銅メダルを獲得。女子100メートル平泳ぎの鈴木聡美(21=山梨学院大)も1分6秒46の銅メダルで続いた。

 レース後のインタビューでメダルのことを聞かれた瞬間、寺川の大きな瞳が真っ赤になった。集大成と決めて臨んだ舞台で悲願を達成。感極まった27歳は「目指してきた1番ではないけれど、うれしいです…」と言葉を詰まらせた。

 100メートル一本に絞って臨んだ2度目の五輪。決勝の大舞台でも慌てなかった。前半は5位で折り返し、「前半リラックスして大きく泳いで、ラスト15メートルでスパート」のプラン通りに追い上げた。残り10メートルの最後のもがき。平井伯昌ヘッドコーチ(49)の顔が寺川の脳裏をよぎった。「タッチまでしっかりやるんだぞ!」のアドバイスを思い出し、左手を思い切り伸ばした。自身の日本記録を更新する58秒83。掲示板で順位を確認すると、安どの笑みを浮かべた。

 流した涙は数知れなかった。16歳で01年世界選手権に出場し、美少女スイマーとして注目された。だが、04年アテネ五輪を境に停滞した。米国に留学したものの、コーチの異動で1年で帰国。国内では中村礼子と伊藤華英の高い壁に阻まれ、代表から漏れ続けた。08年北京五輪の選考会も落選。周囲からは「お疲れさま」と肩を叩かれ、引退の危機にも直面した。

 転機は08年11月だった。ライバル中村の引退を機に、同選手を育てた平井コーチの元を訪ねた。「早く引退したほうがいい。考えが甘い。考え直してこい」と一度は断られ、弟子入りが実現しても過酷な日々が続いた。1日3回練習、経験のなかった筋力トレーニング。重量挙げのバーベルを持ち上げる厳しい内容に「体がちぎれそう」と悲鳴を上げた。

 鬼コーチと衝突することもあった。「金メダルを目指さないとメダルなんて獲れないぞ」と目標を明確に求める同コーチに対し「言ったら期待されるから嫌」と反発。昨年12月の練習中には怒鳴りあいのケンカに発展した。だが、これを境に「目標は金メダル」と明言し、練習に身が入った。4年間で記録は1秒85も伸び「(平井コーチを)選択したことは間違いなかった」を胸を張った。

 「悔し涙」は「歓喜の涙」に変わった。アテネ五輪の200メートル決勝は「どう泳いでいいか分からない」とレース前の招集所で泣き、最下位8位に終わった。緊張のあまり、レースの記憶はない。しかし、今回は「はっきり覚えています」と笑った。5月の代表壮行会では「輝く」と色紙に記した27歳。表彰台で輝く笑顔は自信に満ちあふれていた。

 ◆寺川 綾(てらかわ・あや)1984年(昭59)11月12日、大阪市生まれの27歳。3歳から水泳を始める。高3時に出場したパンパシの女子200メートル背泳ぎで2位に入り国際大会初のメダルを獲得。女子50メートル、100メートル背泳ぎの日本記録保持者。04年アテネ五輪の女子200メートル背泳ぎ8位。11年世界選手権は50メートル2位、100メートル5位。近大出。1メートル74、60キロ。血液型O。

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2012年8月1日のニュース