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上野順恵が銅 アテネ&北京で金の姉・雅恵に続いた

[ 2012年8月1日 06:00 ]

女子63キロ級で銅メダルを獲得した上野順恵(手前)

ロンドン五輪柔道

 女子63キロ級で世界ランク1位の上野順恵(29=三井住友海上)は準々決勝で敗れたものの、3位決定戦を制し、銅メダルを獲得した。姉で70キロ級の五輪連覇を達成した雅恵(33)には並べなかったものの、レスリング女子の伊調千春、馨姉妹に続く史上2組目の姉妹メダリストとなった。男子81キロ級の中井貴裕(21=流通経大)は3位決定戦で敗れ、初日から続いていた男子のメダルは4日目に途切れた。

 安どと悔しさの混じり合った不思議な涙を、上野が流した。3位決定戦はツェデブスレンを攻め、指導2を引き出しての優勢勝ち。「すいません」と頭を下げ、初めての五輪の舞台を「新鮮な感じがした。終わってみれば、楽しかったですね」と振り返った。

 初戦からリズムがつかめないまま突入した丁ダウンとの準々決勝。苦手のけんか四つに終始主導権を握られ、何もできなかった。だが、控室で姉の雅恵さんに「メダルを獲るのと獲らないとでは全然違うから、強気で頑張れ」と声を掛けられたという敗者復活戦は、本来の姿に戻っていた。園田隆二監督は「勝ちたいというより、負けたくない感じになっていた」と敗戦を悔やんだ。

 08年4月6日、福岡での北京五輪最終選考会。谷本歩実(コマツ)に勝ち優勝しながら、代表に選ばれることはなかった。「一本が取れない」が理由だった。その夜、福岡市内の焼き肉店で行われた三井住友海上の打ち上げで、父・法美さんは選考への不満を漏らした。その時、落ち込む周囲を一番気遣ったのが、上野本人だった。「私、来年の世界選手権を目指すから」

 「一本が取れないことに悩んできたけど、泥くさく攻めるのが私の柔道」。開き直り、立ち上がった。約束通り09年、ロッテルダムで行われた世界選手権で初優勝。くしくも、全試合一本勝ちという内容だった。10年、東京で行われた世界選手権で連覇を達成し、追われる立場でも強いことを証明し、堂々の第1シードで五輪の舞台に立った。

 新たな道を歩もうとしていた姉は、2年前に柔道部へ復帰。「順恵の出稽古で荷物を運んであげたいから」と、自動車の運転免許まで取得した。この日も最後の最後までサポートしてくれた金メダリストに「私は(金メダリストの)姉が一番そばにいてくれて、恵まれた環境だったと思う」と感謝した。最後に勝ったのは頂点を逃した悔しさより、姉妹メダルの喜び。「今後についてはゆっくり考えたい」と話した上野の表情は、晴れやかだった。

 ◆上野 順恵(うえの・よしえ、三井住友海上=柔道女子63キロ級)世界選手権は09、10年と2連覇し、昨年は2位。五輪は初出場。姉の雅恵さんは柔道70キロ級で五輪2連覇。得意は大外刈り。北海道・旭川南高出。1メートル64。29歳。北海道出身。

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