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世界を知った 海外レース初V

[ 2008年7月18日 06:00 ]

01年7月2日、ザグレブ国際・男子400メートル障害で優勝した為末大

 今につながる、前半から攻めたレースだった。単身での欧州遠征第2戦となったザグレブ国際。為末は初戦のゴールデンリーグ・ローマ大会(6月29日)で3位に入った勢いそのままに、1台目から軽やかにハードルを越えていく。スピードを保ったまま第4コーナーを抜けて最後の直線へ。前にいたのは、後にアテネ五輪金メダルに輝くフェリックス・サンチェス(ドミニカ共和国)ただ1人。「えっ、勝てるの?」。半信半疑のまま、ギアを切り替えた。

 最後の10台目を越えてサンチェスを逆転。その瞬間、かつてない興奮が過酷な無酸素運動の疲労を凌駕(りょうが)した。「まさかって感じで、頭がカーッとなった」。サンチェスとわずか0.03秒差、48秒57で海外レース初優勝を飾った。レース後、同大会の男子百メートル出場に向けてウオーミングアップ中だった朝原宣治に「何番?」と聞かれ、笑顔で返した言葉は「1番!」。“侍ハードラー”と呼ばれるプロ選手の誕生はまだ先になるが、為末は確かな胎動を感じていた。

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2008年7月18日のニュース