【日本ダービー】ドウデュース95点 頼もしい自己主張、腹下長い立ち姿 体調ピーク

[ 2022年5月24日 05:30 ]

鈴木康弘「達眼」馬体診断

ドウデュース

 ダービーディスタンスも僕に任せてください!鈴木康弘元調教師(78)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第89回ダービー(29日、東京)ではドウデュース、イクイノックスをトップ採点した。中でも達眼が捉えたのは2400メートル適性を自らアピールするドウデュースの立ち姿。馬体診断の記事に目を通したかのようにその注文に応える令和の“新聞を読める馬”だ。

 昭和40年頃の東京競馬場に“新聞を読める馬”がいました。人気になると凡走し、人気がないと好走して穴をあける…の繰り返し。レース前に担当厩務員が広げる新聞の競馬面をのぞき込んでいたそうです。自分が人気になっている時は緊張し過ぎて全く力を出せませんが、人気のない時は発奮して全力を出し切れる。67年秋の天皇賞馬カブトシローに付けられた奇想天外なニックネームはそんな冗談話に由来しています。

 ドウデュースの立ち姿を見た途端、その半世紀前のニックネームを思い出して噴き出しそうになりました。「ダービーの2400メートルを乗り切るには腹下の長い(胴長)体形が望ましい」。スポニチの馬体診断で何度も書いたくだりをドウデュースも読んだのでしょうか。昨年の朝日杯FSや皐月賞は普通に立っていたのに、今回だけはわざと後肢を後ろに踏み、腹下を長く見せています。「僕は2400メートルもこなせます。任せてくださいよ」と訴えているようなポーズで写真に納まっています。

 実際には腹下にさほど長さはありません。肩とトモに付いた分厚い筋肉はマイラーをイメージさせますが、各部位のつながりには遊びがある。2400メートルにも対応できそうな余裕のあるつくりです。「距離はこなせます」と自己主張するような立ち姿が何よりも頼もしい。

 「ダービーで問われるのは皐月賞後の成長ぶり」。そんな記事も馬房の中で読んだのでしょう。皐月賞に比べて馬体の張りが明らかに増している。特に首と肩には浮き立つような筋肉をつけています。

 「ダービーにはピークの仕上がりが求められる」。そんな記事も目にしたのでしょう。毛ヅヤも皐月賞時より数段いい。初夏のまぶしい日差しに茶色い光沢を放っています。大一番に合わせて体調はピークを迎えました。カブトシローから半世紀を経て出現した令和の“新聞を読める馬”。今の時代ですからスマホでネット記事をのぞいただけかもしれませんが、その記事に書かれたダービーを勝つ条件は全て整えています。(NHK解説者)

 ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の78歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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