【エリザベス女王杯】クロノ100点!明鏡止水の瞳、秋華賞V激闘余波なし

[ 2019年11月6日 05:30 ]

穏やかな目つきをしているクロノジェネシス(撮影 亀井 直樹/スポーツニッポン新聞社)
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 3歳の女王候補が世界遺産級の輝きを放った。鈴木康弘元調教師(75)がG1有力馬の馬体を診断する「達眼」。エリザベス女王杯(10日、京都)では秋華賞馬クロノジェネシスに唯一の満点を付けた。達眼が捉えたのは首里城の高台から遠方を見つめるような涼しい目と、首里の城門を想起させる機能美。火災で正殿などが焼失した首里城をしのんで、首里の自然や文化遺産になぞらえながら解説する。

 目は心の鏡といいます。遠くを見つめるクロノジェネシスの涼しげな目が映し出しているのは心の余裕。秋華賞時はすぐ前方の一点に眼光を光らせる集中した目つきでしたが、今度は前方のかなたを穏やかに見つめています。耳をしっかり立て、頭を自然に上げながら遠くへ視線を向けている。

 その目を見たとき、失われてしまった首里城の風景が真っ先に浮かびました。標高120メートルの高台に立つ首里城の物見台「西のアザナ」から那覇の街や水平線上にかすむ慶良間諸島を眺望するような涼しい目。あるいは、首里城第4の門「広福門」から聖地・弁ケ嶽の緑を遠望するような穏やかなまなざし。いずれも調教師時代から再三足を運んできた首里城の大好きな風景です。

 高台から遠方を見つめるようなクロノジェネシスの穏やかなたたずまい。そこには心にゆとりがうかがえます。意外でした。秋華賞優勝から中3週。激闘が尾を引いて目つきが鋭くなっていると思っていました。秋華賞馬がその年のエリザベス女王杯も勝ったのはファインモーション(02年)、ダイワスカーレット(07年)、メイショウマンボ(13年)の3頭だけ。スティルインラブ、アパパネの3冠牝馬も敗れました。古馬との力差以上に短いレース間隔で心身のコンディションを整えることの難しさを示しています。ところが、今年の秋華賞馬は涼しい目つきをしている。

 心の余裕だけではありません。腹周りが全くしぼんでいない。牝馬は反動が腹に表れやすく、巻き上がってしまうこともありますが、この腹なら大丈夫。秋華賞のダメージは見当たりません。

 450キロそこそこのスリムなボディー。小さな馬体で大きな仕事ができるのは機能性の高いつくりだからです。全ての部位が無駄なく機能的にリンクされている。首里城になぞらえれば、通路と役所の機能を備えた「広福門」。琉球王国時代は中央部が通路、左右の翼棟に戸籍の管理などを行う大与座(うふくみざ)と寺社座という役所が置かれていたそうです。先日の火災で閉鎖するまでは券売所になっていましたが、そういう機能性の高い門を想起させる馬体のつくりです。

 広福門型の骨組みを包むのは薄くても繊細でしなやかな筋肉。クロフネ(母の父)のごつさが全くない。ふくよかなマイラー体形の半姉ノームコア(ヴィクトリアマイル優勝)とは対照的なスリムな中距離体形。父がハービンジャーからバゴに替わったからでしょう。姉は昨年のエ女王杯で5着に敗れましたが、こちらは距離延長にも対応できる体つき。何より頼もしいのが心のゆとりです。目は心の鏡。その鏡には首里城の高台から遠くを見つめる3歳の王女が真っ先にゴールする姿も映し出されているかもしれません。(NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の75歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。今春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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