【マイルCS】ステルヴィオ95点!平安名馬「池月」の再来

[ 2018年11月13日 05:30 ]

心身ともに平安時代の名馬「池月」を思わせるステルヴィオ
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 淀の先陣争いを制すのは21世紀の池月(いけづき)か磨墨(するすみ)か。鈴木康弘元調教師(74)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第35回マイルCS(18日、京都)ではステルヴィオとモズアスコットを1位指名した。達眼が捉えた両馬の決定的な変化とは…。鎧(よろい)武者とともに戦場を駆け巡った日本古来の名馬になぞらえて解説する。

 近代以前の日本を代表する名馬といえば池月と磨墨でしょうか。1184年、源義経と木曽義仲が激突した宇治川の戦いで対岸の義仲勢目がけて先陣を争った両馬。一計を講じて勝ったのは義経旗下の武将、佐々木高綱を乗せた池月でした。

 名月の夜に池の水で磨き上げられたような神秘的な輝きを放つ馬体。面構えは肢体の流麗さとは不釣り合いなほど野性的でどう猛だったと伝えられています。一方の磨墨は穏やかで気品ある顔立ちだったとか。平家物語にも登場する伝説の両雄。ステルヴィオを歴史上の駿馬になぞらえるなら池月です。

 水面に月を映す池のほとりでたたずむような静謐(ひつ)な立ち姿。弓なりになった長い引き手を遊ばせながら絶妙なバランスで立っています。3歳馬らしからぬ落ち着いた物腰。ところが、顔に目を移すと、たおやかな立ち姿と不釣り合いなほど凄みを利かせた表情です。ギラギラした目、切っ先鋭い竹のような耳、鼻もとんがらせています。顔に闘争心をにじませながら流麗に立つ。池月の生まれ変わりのような姿です。

 今春からの成長も感じられます。トモに一層、力が付いてきた。押しトモ(角度の浅いトモ)ですが、筋肉のボリュームが増えたためトモの浅さが目立たなくなりました。腹周りも十分に締まっています。短距離で活躍したロードカナロア産駒とはいえ、背と腹下が長い中距離体形。マイルは守備範囲です。左後肢の球節に擦り傷が見られますが、問題ないでしょう。

 池の水で磨き上げたように前髪とタテガミが奇麗に梳(す)いてあります。蹄油も塗られ、行き届いた手入れの跡がうかがえる。武将、佐々木高綱が愛したように厩舎スタッフに愛情を注がれているのでしょう。21世紀の池月と呼ぶにふさわしい名馬の姿です。(NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の74歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70〜72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94〜04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。

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