【日本ダービー】相棒信じた!池添7度目挑戦で初V

[ 2011年5月30日 06:00 ]

<日本ダービー>皐月賞との2冠を達成したオルフェーヴルと池添騎手は歓喜の表情

 池添、ついに夢の頂点だ。「第78回日本ダービー」でオルフェーヴルを2冠へと導いた池添謙一騎手(31)もガッツポーズでVを表現。デュランダル、スイープトウショウ、ドリームジャーニーなどの名馬とのコンビで勝負強さを見せてきた男が、7度目の挑戦でついに現役8人目のダービージョッキーの称号を手に入れた。

 激しく叩きつける雨も、ドロドロにぬかるんだ芝も関係ない。ただ、相棒の背中を見つめ、能力を信じ抜いた。オルフェーブルと夢にまで見たダービー制覇を成し遂げた池添。雨と汗と涙にまみれた泥だらけの勝負服は勝利の勲章。ゴールの瞬間に右手を天高く突き上げ、控えめなウイニングランを終えて脱鞍所に戻ると、愛馬の首筋をポンと叩き涙声で語りかけた。

 「よくやったな。おまえ」

 スタートから向正面は中団馬群の最後尾で進めた。縦長の隊列の後方寄り。差し馬に不向きな不良馬場。「あれで届くのか…」。1番人気馬の大胆な戦法にスタンドの大観衆がざわつく。それでも池添の心に迷いはなかった。「皐月賞よりも落ち着いていたし、返し馬もいいストロークで走っていた。位置取りは深く考えていなかったし、いいリズムで走っていたので、これでいいと…」

 前日まではインの先行馬が残っていた芝コースだが、この日は外差しが決まり始めた。「直線は外。レース前から決めていた。4角までは完璧だった」と振り返った鞍上だが、直線で2冠への試練が待っていた。追い出し始めたタイミングで外にいたナカヤマナイトと接触。さらに前にいたサダムパテックとの間に挟まれ、行き場を失ったかに見えた。「3角で少し内にもたれ加減になったので大外には出さず内へ。最後は勝負根性。狭い所を本当によく割ってくれた。普通の馬ならあそこで終わっていた」。2頭の間に馬体をねじ込み、ライバルをはじき飛ばすように自らVロードを切り開いた。

 デビューから8戦。いつもオルフェの背中には池添がいた。「ずっと乗ってきた強みがある。テン乗りの馬にだけは負けたくないと思っていた」。相棒の能力を信頼した鞍上だが、ダービーで1番人気馬に騎乗するプレッシャーは相当だった。「朝起きて、あらためて重みを感じていた。早く終わってほしいとも、レースが来てほしくないとも思った。デビュー当時はダービーを勝ちたいと簡単に口にできたが、最近はそれもできなくなっていた」

 重圧から解放され、うれし涙も乾いた池添は無邪気な笑顔で続けた。「普段は馬の話をしない父(兼雄師)に、きょうだけは“凄いだろ”と自慢します。ダービージョッキーの名に恥じないよう頑張りたい」。オルフェとの夢の旅路は秋、第2章を迎える。

 ◆池添 謙一(いけぞえ・けんいち)1979年(昭54)7月23日、滋賀県生まれの31歳。父は池添兼雄師。98年3月、鶴留厩舎からデビュー。98年北九州記念(トウショウオリオン)で重賞初制覇。02年桜花賞(アローキャリー)で初G1。7度目の挑戦でダービーを手にした。1メートル62、50キロ。血液型O。

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2011年5月30日のニュース