TEN“同窓会”と三木助の「芝浜」

[ 2023年12月21日 18:40 ]

五代目桂三木助の独演会に駆けつけた9人の同期(前列左から柳家小八、三木助、古今亭文菊、中列左から鈴々舎馬るこ、三遊亭ときん、柳亭こみち、後列左から古今亭志ん五、柳家小平太、柳家勧之助、古今亭駒治)
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 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】師走の慌ただしさを縫って、いくつか落語会に足を運んでいる。5日は東京・銀座で柳家喬太郎(60)の「居残り佐平治」を聞き、翌6日には東池袋のホールで桂三木助(39)の芸歴20周年記念公演を満喫した。

 当代屈指の人気と実力を兼ね備えた喬太郎の“居残り”はもはや名人芸の域。知らずのうちに筆者も佐平治に乗せられてしまっていた感じだ。10月30日の紀伊國屋ホールでも膝(ひざ)の具合が悪くて見台(膝隠し)を使っていたが、完治は先のようだ。忙しすぎて治療に時間が割けないのだとしたら気の毒。11月30日に還暦を迎えたが、週刊文春の連載「川柳のらりくらり」ではないが、しばらくはだましだまし歩んでいくしかないのだろうか。ファンの心配は募る。

 続いて「令和の三木助」と題した五代目三木助の独演会。看板に偽りありで、独演会と言いながら同期が大集結。2003年入門の落語協会の10人だ。二つ目時代にその名も「TEN」というユニットを結成して活動したおなじみのメンバー。古今亭文菊(44)、二代目柳家小八(46)、三遊亭ときん(47)、鈴々舎馬るこ(43)、三木助、柳亭こみち(49)、二代目古今亭志ん五(48)、古今亭駒治(44)、柳家小平太(54)、柳家勧之助(42)が20周年をにぎやかに祝った。

 早い遅いはあったが、既に全員が真打として活躍中。勢ぞろいがかなったのは奇跡に近かったはず。三木助を中央に高座に横一列に並んで、一人ずつ口上を述べ、最年少の主役を手荒くいじりまくった。

 切さ琢磨して成長してきた10人。ともに歩んできた20年間の思い出は尽きることもないが、仲間たちが多く証言していたのが三木助の偏食ぶり。そして結婚の勧めだった。紅一点のこみちは終演後にロビーに姿を見せて、「誰かいい人がいたらよろしくお願いします」と声を張り上げていた。

 口上の後、三木助が高座にかけたのは「お家芸」とも言える「芝浜」だった。大みそかを舞台に語られることが多い師走の定番。芝の浜で大金が入った革財布を拾った魚屋の勝五郎と、それを夢の中の話にしてしまった女房の夫婦の機微を描いた人情噺。その日もけっこうな出来だったが、奥さんがいればまた違った味わいが出てこよう。祖父譲りの名作。お嫁さんをもらった五代目三木助の「芝浜」をたっぷりと聞いてみたいものだ。

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