朝ドラ「舞いあがれ!」 子役・浅田芭路に表れる作品の特性

[ 2022年10月5日 08:00 ]

連続テレビ小説「舞いあがれ!」でヒロイン・舞の幼少期を演じる浅田芭路(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】3日にスタートしたNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」の制作統括・熊野律時チーフプロデューサーはこの作品の特性について「柔らかく優しい物語」と話す。

 ヒロインの舞は原因不明の発熱で、小学校を休みがちな少女。初回の放送では、同級生の貴司に勝手に推薦されてクラスの飼育係になる場面があった。発熱を避けるため走ってはいけない舞がウサギの逃走で走るはめになると貴司は「ごめんな」と謝罪。その時、舞は不快な顔を見せることなく、逆に「(飼育係を)ほんまはやりたかったんや。ありがとう」と貴司を気遣う言葉を返した。

 熊野氏は舞の人物設定に関して「いろんな人とつながって手を携えて空高く上がっていくイメージを大事にしたいと考えた。舞は周りの人たちの気持ちがよく分かる人で、自分が前に進もうとする時、まず周りの人を見て、その人が一緒に来てくれているのかどうかを確認しながら動く」と説明する。

 舞はやがて空高く飛ぶことにあこがれ、パイロットになることを夢見る。典型的な朝ドラのヒロインなら、元気いっぱいに夢に向かってまい進するところだが、今作はそう単純ではない。

 現在描かれている幼少期は、その特性の原点で、子役の浅田芭路(9)には複雑な芝居が求められた。浅田はこれまで、本年度前期のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」などに出演しており、舞役には219人が参加したオーディションで選ばれた。

 熊野氏は「幼少期の舞は、うまくいかない部分を抱えている子。人の気持ちが敏感に分かってしまうがために、自分が思っていることを言い表せず、行動に表せないという面がある。それが、いろんな人たちとの関わりの中で次第に開かれていき、その過程の中で喜びを感じ、素敵な笑顔を見せる。それを表現するために高度な芝居ができる人を探していたが、オーディションで浅田さんにお会いし、陰の部分と抜群にチャーミングな笑顔を表現できる人だと思った」と話す。作品の特性である「柔らかく優しい物語」の原点を体現できる子役が浅田だったというわけだ。

 いずれ舞役は浅田から福原遥(24)に引き継がれる。熊野氏は「福原さんはご自身がそういうタイプ。撮影現場で共演者と柔らかく打ち解け、温かい雰囲気をつくっている。ヒロインとして自分が周りを引っ張るという感じではなく、自分が真ん中にいて陽だまりをつくるという感じ。それが映像に表れている」と話す。

 その言葉通り、見ていて心地よくなるような朝ドラになることを期待する。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

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2022年10月5日のニュース