里見女流5冠 黒星発進、棋士編入試験 127手で力尽くも「注目してもらえ凄くうれしい」

[ 2022年8月19日 05:20 ]

プロ棋士編入試験5番勝負の第1局に臨んだ里見香奈女流五冠=18日午前、大阪市の関西将棋会館
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 里見香奈女流5冠(30)が18日、大阪・関西将棋会館で棋士編入試験5番勝負の第1局に臨み、試験官の先手・徳田拳士四段(24)に127手で敗れた。女流全8冠中5冠の第一人者が、男女不問制度での四段を目指す戦い。4月のデビュー以来の勝率が9割を超える徳田に屈したが、過去に同試験を突破した2人は共に3勝1敗と黒星も経験した。来月22日、岡部怜央四段(23)との第2局で初勝利を目指す。

 髪を後ろで結び、心境を表すような白のシャツ、スーツ姿で臨んだ里見が、駒台を右手でかざした。投了の局面は角銀損が大きく、徳田王の背後へ竜を進入させたが戦力差は覆しがたい。3時間の持ち時間も残り8分から秒読みまで考え、全てを出し切って負けを受け入れた。

 「こういった大舞台で指せるのはなかなかない。注目してもらえるのは凄くうれしい」

 14年に今泉健司五段(49)、19年に折田翔吾四段(32)が突破した。現行制度になって3人目、女性では初の挑戦へ向けられた関心に感謝を示す言葉が印象的だった。

 指し手では徳田が57手目、中央に持ち駒の銀を投入して守備を厚くした局面を悔いた。自陣の急所をにらむ徳田の2六角への対処が課題の局面。結果的に正面から利きを遮る角打ちを選択したが「もう少し手がなかったのかな」と反省。切れ味鋭い里見将棋の代名詞「出雲のイナズマ」を繰り出せなかったが、1カ月後の第2局へ「目の前の対局に全力を尽くして、しっかり準備したい」と切り替えに努めた。

 4月に四段に昇段した徳田は通算成績がこの日の勝利で13勝1敗。相手のレベルが違うとはいえ一昨年まで4年連続、勝率1位賞に輝いた藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋聖を含む5冠=の10勝4敗を上回る勝率・929は全棋士のトップで6月以降の連勝も10に伸ばした。棋士番号順に選出した新四段5人の試験官でも最も勢いのある相手といえ里見は初戦から最難関に挑むことになった。

 振り返れば同試験を突破した今泉も第3局、折田は第2局で黒星を喫した。女流史上最多、タイトル通算49期の経験値を生かすときがきた。

 ▽編入試験 里見は5月、棋士との公式戦で直近10勝4敗に到達。編入試験の受験資格「公式戦で10勝以上かつ勝率6割5分以上」を女流で初めて満たし、受験を決断した。毎月1局若手棋士と計5局を行い、3勝すれば四段に昇段、3敗すれば不合格。合格すれば来年4月付で順位戦の最下位C級2組の下、フリークラスに編入される。

 《試験官の徳田四段「光栄」》試験官を務めた徳田は終局後、「新人でこれだけ注目される対局、経験はできない。光栄でした」と与えられた対局機会に感謝した。同じ関西本部所属ながら、練習将棋の経験もなかった里見との正真正銘の初対局。「(里見側に)もう1枚あれば危ない場面もあった。楽観視しすぎた」と反省したが、高勝率を支える手堅い指し回しが光った。

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