「ちむどんどん」タイトルバック CGクリエーター・森江康太氏が込めた思い

[ 2022年5月2日 08:20 ]

連続テレビ小説「ちむどんどん」のタイトルバックの一場面(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」のタイトルバックを手掛けたCGクリエーターの森江康太氏に話を聞いた。

 タイトルバックは全編フルCGアニメーション。美しい沖縄の風景が印象的だが、特に、ヒロイン・暢子(黒島結菜)をイメージした女性が海に向かって走ってゆくラストシーンが鮮烈だ。

 「暢子のはつらつとした、ちょっとボーイッシュな雰囲気を描き出したかった。シークワーサーの実を取る動き一つをとっても、暢子ならどんな取り方をするのか想像を膨らませ、走りながら一気に実をむしり取っていくようなしぐさに暢子らしさを出してみた。サンダルを脱ぐ時も、浜辺を駆けながら、そのまま放り投げる。そういったキャラクターの動きの細部に、私たちのこだわりが詰まっている」

 アニメに女性の顔は映し出されないが、後ろ姿とその動きだけで黒島の特徴をよく表現しているように見える。

 「ポスター撮影の時に初めて黒島さんにお会いした。その時の黒島さんの様子が、暢子の持つ優しさや強さ、その場に彼女がいるだけで周りがパッと明るくなるような存在感をお持ちで、暢子にぴったりだと思った。それまでは脚本で読んだ暢子像しかなかったものが、実際にお会いしたことで、どのようにすれば暢子らしさが表現できるのかを明確に思い描くことが出来た」

 タイトルバックは月曜が約90秒バージョンで、火曜から金曜までが約75秒バージョン。月曜には途中、沖縄そばが映し出されるが、刻まれたネギや肉などの具材の質感が素晴らしく、食欲をそそる。

 「アニメで料理をおいしそうに表現するというのは難易度が非常に高い。しかし、今作で重要なアイテムである沖縄そばはどうしても入れたかった。どうすればおいしそうに見せることが出来るのか、さまざまな過去作品をリサーチして私たち独自の表現に落とし込んでいった。ハイライトの微かな動きや湯気の出方、全体の色味、線の出し方など細部にまでこだわったカットなので、月曜にこれを見て『沖縄そばが食べたくなった!』と思う人が増えてくれればうれしい」

 実写で表現できないことがアニメでは表現できる。この朝ドラのタイトルバックにアニメが用いられたのは、まさに、それゆえだった。

 「例えば、私たちが旅行先で見た素晴らしい景色が、いざ写真にしてみるとその魅力が十分に伝わらないということがある。人の眼とレンズの違いという物理的な要因もあるが、われわれが実際に景色を見ている時の臨場感、においや温度、そういったさまざまな要因が絡み合って出来上がる景色に、われわれは心を動かされる。絵画やアニメは、こういった『心象風景』の描き方を極限まで突き詰めた表現方法の一つである。沖縄の心象風景のような今作のタイトルバックを、沖縄の方々が見て喜んで頂けるのならば、これ以上の褒め言葉はない」

 そんな森江氏の思いが、この朝ドラの魅力の一つとして結実している。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

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2022年5月2日のニュース