「ちむどんどん」優子の微笑 演出側「仲間由紀恵さんが優しく包む母親像を作った」

[ 2022年4月29日 08:20 ]

連続テレビ小説「ちむどんどん」第15回で、高台で話す優子(仲間由紀恵)と暢子(黒島結菜)(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】29日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第15回で、女優の黒島結菜(25)が演じるヒロイン・比嘉暢子が、女優の仲間由紀恵(42)が演じる母・優子に、自身の葛藤を打ち明ける場面があった。

 演出した木村隆文氏は「あのシーンの舞台となった高台は、ロケハン以前のかなり初期段階で、作者の羽原大介さんと山原(やんばる)のさまざまな場所を歩いた時に見つけた場所だった。その時、この場所ならば暢子と優子の良いシーンを描けるのではないかという話をしていたが、実際に羽原さんの台本にあのシーンが出てきたので、あの高台で撮ろうと考えた」と明かす。

 暢子はあのシーンの前に、就職する予定の会社を優子とともに訪問。自身のトラブルを謝るはずだったが、心ない言葉を相手から浴びたため、自ら就職を断ってしまった。

 木村氏は「暢子はあの高台から、自分が生まれ育った村を見下ろす。やりたいことが見つからず、これからどのように生きていけばいいのか分からない。そんなもやもやした気持ちから、本心とは裏腹に『この村も、沖縄も、自分が女だということも、全部大嫌い』と言ってしまう。あのシーンを比嘉家の中で撮影したら、違った空気感になっていただろう。暢子の目の前に、自分が生まれ育った村がリアルに広がっているからこそ、あの良い空気感が生まれたのだと思う。撮影当日は風が強く、撮影の条件は良くなかったが、黒島さんはあの場所に立ったことで、自然に『この村も大嫌い』と言い、涙をあふれさせていた」と説明する。

 暢子は自らの思いを優子に明かしているうちに徐々に感情が激して涙を流し始める。そして、優子から「泣いていいよ。もっといっぱい泣きなさい」と言われると、顔をくしゃくしゃにして泣きじゃくる。

 木村氏は「黒島さんは役者としての身体能力が高い。その場の瞬発力、その時その時に生まれる感情を大事にしている。事前に想定していたものがあっても、お芝居をしていく中で、思いもしなかった感情が生まれたら、それを素直に出すことができるし、それに乗ることができる。同じシーンでも、もう一度やると、また違ったものが出てくる。現場で生まれるものを大切にしている役者さんだ」と話す。

 泣き続ける暢子に対し、優子はほほえむ。前日放送の第14回で、涙ながらに告白する良子(川口春奈)に対して笑顔を見せたのと同様の対応だ。

 木村氏は「あのシーンで、細かい注文は出していない。仲間さんが黒島さんのお芝居を受け取って、あの芝居をされたのだと思う。良子とのシーンもそうだったが、あのような局面で笑える母親は素敵だ。難しい表情を見せるのではなく、笑って優しく包んであげる。娘たちもそれで安らぎを覚える。そういう母親像を仲間さんが作ってくださった」と語った。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

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2022年4月29日のニュース