映画監督の青山真治さん死去 57歳「EUREKA」で国際的評価、妻とよた真帆「愛情に深く感謝」

[ 2022年3月26日 05:30 ]

死去した青山真治さん
Photo By 共同

 2000年のカンヌ国際映画祭に出品された「EUREKA(ユリイカ)」などで国際的に評価された映画監督で作家の青山真治(あおやま・しんじ)さんが21日午前0時30分、頸部(けいぶ)食道がんのため都内の病院で死去した。57歳。北九州市出身。葬儀は近親者で行った。喪主は妻で女優のとよた真帆(54、本名青山真穂=あおやま・まほ)。後日お別れの会を開く。

 昨年春に食道にがんが見つかり、手術などは行わず通院して治療を続けていた。関係者によると、今年撮影を予定した新作映画の準備も進めており元気だったという。だが、今年に入って体調が悪いと話すことが多くなり、最近になって入院した。

 その後、容体が急変し、最期をみとったとよたは「病院から連絡を受け駆けつけ、声をかけましたら私の目を見て2回うなずき、手をぎゅっと握り返してくれました。それから半日、最期は眠るように息を引き取りました」と自身のサイトで報告。「結婚して20年、優しくて勉強家だった夫にもらった時間、愛情に深く感謝しています。今は青山真治の魂が、自身の思い描く素敵な世界にいけるよう強く願っています」としのんだ。事務所関係者によると、とよたは憔悴(しょうすい)し切っているという。

 青山監督は立教大卒業後、95年のVシネマ「教科書にないッ!」で監督デビュー。翌96年、初の劇場用長編映画「Helpless」で注目された。2000年にはバスの乗っ取り事件を題材に、事件で傷を負った人間の再生を描く「EUREKA」を発表。役所広司(66)主演で上映時間3時間37分の白黒映画だったが、カンヌで国際批評家連盟賞を受賞。さらに同作を小説化し、01年に三島由紀夫賞を受賞した。

 私生活では、カンヌのコンペティション部門に選出された01年「月の砂漠」でヒロインに起用したとよたと02年7月に結婚。とよたは16年に刊行したフォトエッセーの出版講演会で「付き合っている頃、夫が猫のトイレの掃除をしてくれた。その時、この人と一緒に暮らしていけると思いました」となれそめを明かしている。サイトには気丈に「生前、応援してくださった皆さま、本人に代わりまして御礼申し上げます」と感謝の言葉をつづった。

 ◇青山 真治(あおやま・しんじ)1964年(昭39)7月13日生まれ、北九州市出身。立教大入学後から、8ミリ映画の製作を始める。11年には「東京公園」でロカルノ国際映画祭の金豹賞(審査員特別賞)を受賞。他の代表作には、田中慎弥さんの芥川賞受賞作を映画化した「共喰い」や、ベネチア国際映画祭に出品した「サッド ヴァケイション」など。ドラマや舞台の演出も手掛け、多摩美術大や京都造形芸術大(現京都芸術大)で教壇に立った。

 ▽食道がん 食道の内面を覆っている粘膜の表面にでき、食道内にいくつも同時に発生することもある。初期には自覚症状がなく、進行するに従い飲食時の胸の違和感、飲食物がつかえる感じ、体重減少、胸や背中の痛みなどの症状が出る。発生の主な要因は喫煙と飲酒。

 ▼役所広司(「EUREKA」などで主演)監督の作品に参加できたことは俳優として大きな財産になりました。これまで青山監督が残された作品は、今の若手の映画監督たちに大きな影響を与えています。またいつか青山監督作品に参加できる日を夢見ていましたが、こんなに早く逝かれるとは思ってもいませんでした。残念です。日本映画にとって、大きな才能をなくしました。

 ▼宮崎あおい(「EUREKA」などに出演)青山組のカッコよくてチャーミングな大人たちに出会って、子供だった私は映画の現場が大好きになりました。こんなふうに仕事をする大人になりたいと思いました。自分も大人になり、一緒に過ごせた時間は多くはなかったけれど、どの時間も心の底から楽しい特別な時間でした。パリでのヘベレケな青山さんも、お祝いで歌を歌ってくれた青山さんも、全部大好きです。全部全部大好きです。さみしい。会いたいです。

 ▼多部未華子(「空に住む」で主演)役者をとにかく信じてくださり、居心地よくさせてくれる、とても穏やかで素敵な監督でした。またいつかどこかで、監督の作る作品に参加したかったです。青山監督の作品に参加させていただけたこと、心から誇りに思います。どうか安らかにお休みください。

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