62年ぶりの大名跡復活!春風亭柳枝が落語界に春を運ぶ

[ 2020年10月14日 08:30 ]

 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】五代目三遊亭金馬の襲名披露興行が続いている。四代目は金翁(91)を名乗り、弟子で次男の金時(57)が五代目を襲名。コロナ禍の中、秋の落語界を大いに盛り上げている。

 金馬といえば、1964年11月8日に70歳で永眠した三代目がおなじみ。話しっぷりが明りょうで、わかりやすさに定評があった。「居酒屋」「孝行糖」などが人気で、「藪入り」は映像でも残っている。

 四代目は小金馬時代の55年にラジオでスタートしたNHK「お笑い三人組」で人気者になり、67年に金馬を襲名。昭和、平成、令和と落語界をリードしてきた。2018年には心不全と脳梗塞を発症して生死をさまよったが、見事にカムバックを果たした。

 大名跡の復活といえば、こちらも話題を呼ぶ。八代目が亡くなってから62年ぶりの「春風亭柳枝」のお目見えだ。来年3月に、春風亭正朝(67)の弟子で二つ目の正太郎(39)が真打ち昇進と同時に九代目を襲名する。

 59年10月8日に53歳で亡くなった八代目は本名を島田勝巳といい、「結構です」の口癖から「お結構の勝っちゃん」と呼ばれて親しまれた。「ずっこけ」「野ざらし」などの演目が音で聞けるが、メリハリが効いて歯切れのいい話しっぷりだ。

 同年9月23日にラジオの公開録音で「お血脈」を演じている最中に脳出血で倒れ、15日後に死去した。ラジオで放送された追悼番組の音源が残っている。五代目古今亭志ん生、二代目三遊亭円歌、七代目一龍斎貞山が出演。次の出番だった志ん生は楽屋に運ばれてきた柳枝を見ており、本来ならば「子別れの下」を12~13分かけて演(や)る予定だったが、「楽屋の方が心配で、廓(くるわ)のいろんな噺をして8分で下りちゃった」と話している。

 41年1月14日に亡くなった七代目柳枝の声もSP盤で残っている。噺の合間に「エヘヘ」と入れることから「エヘヘの柳枝」と呼ばれ、リズミカルな歌い調子が耳に心地良い。筆者には「エッヘ」と聞こえる。大看板になりうる存在で期待も大きかったが、この人も49歳の若さで逝っている。

 かつて志ん生が五代目を襲名する際、三代目が54歳、四代目が48歳で早死にしていることから思い止まった方がいいのではとの声もあったそうだが、五代目は83歳まで長生きした。九代目を襲名する正太郎も先代、先々代の早世は気にせず、新しい柳枝を作って欲しい。

 それにしても先代(五代目)春風亭柳朝の弟子筋から実力と人気を兼ね備えた落語家が続々と出て来る。総領弟子の一朝(69)、小朝(65)、そして正朝。一朝の弟子、一之輔(42)はいまや押しも押されもしないスーパースターに成長している。91年2月に61歳で逝った五代目柳朝も天国で目を細めているだろう。

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2020年10月14日のニュース