NHK-FM「ディスカバー・ビートルズ」(上) 日曜夜の愉楽のひととき

[ 2020年7月1日 13:30 ]

NHK-FM「ディスカバー・ビートルズ」の番組ロゴ(C)NHK
Photo By 提供写真

 【牧 元一の孤人焦点】今、NHK-FM「ディスカバー・ビートルズ」(日曜後9・00)に、はまっている。これまで自分はビートルズのことをよく知っていると思っていたが、このラジオ番組を聞くと、まだまだ、未知の領域がたくさんあることが分かる。

 例えば、6月21日の放送で流れた曲「エニイ・タイム・アット・オール」。リードボーカルはジョン・レノンだが、曲の始まりで♪エニイ タイム アット オール エニイ タイム アット オール…と続けて歌う部分の2回目の声は、実はポール・マッカートニーだという。番組のDJを務めるミュージシャンの杉真理は「ジョンの声が出ず、ポールが歌っている」と説明。耳を澄ませて聞けば、確かに、ポールの声だ。当然、ファンならば知っている人もいるのだろうが、私はおよそ45年前からこの曲を聞いていたにもかかわらず、その時初めて気づかされた。とても愉快な体験だ。

 杉がスタジオでギターを弾いて曲の解説を行う場面もある。例えば、ジョンの「アイル・ビー・バック」のイントロ。杉は「今回、発見したことがある」と告げ、同じアルバムに収められているポールの「アンド・アイ・ラヴ・ハー」のイントロも弾いて2曲の類似性を実証。「ビートルズは一つの発想をジョンとポールが違う形にする」と指摘した。なるほど、言われてみれば、ジョンの「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」とポールの「ペニー・レイン」も同じアルバムで、同じように故郷の街を歌う発想から生まれている。とても興味深い分析だ。

 この番組は、昨年、マイケル・ジャクソンを1年かけて特集したディスカバー・シリーズの第2弾として今年4月に始まった。プロデューサーの中田淳子氏は「今年はビートルズが解散してから50年。ビートルズはファンが多く、いろんな意見があるので、なかなか難しいと思ったけれど、やってみようと考えました」と話す。

 DJはビートルズに精通する杉とTRICERATOPS・和田唱(原則として最終週に出演)。杉は出演依頼を受けた当時のことを振り返り「大変だなと思いました。ビートルズのファンには、うるさ型がいるじゃないですか!?僕だって、ビートルズの全てを知ってるわけじゃないですから。知った気になっているところを、もう一度、突き詰めてみようと思いました」と話す。

 番組ではデビューアルバム「プリーズ・プリーズ・ミー」(1963年)からラストアルバム「レット・イット・ビー」(1970年)までを順次特集。毎回、アルバムのA面とB面の片面分の曲を紹介して解説しており、次回の7月5日は4枚目のアルバム「ビートルズ・フォー・セール」(64年)のA面となる。

 リスナーは10代から70代までと幅広く、中田氏は「マニアの人も満足できて、あまり知らない人も楽しめる番組」と説明。杉は「ビートルズの音楽自体が、何度聞いても、初めて聞いても楽しい」と語る。

 日曜夜の愉楽のひとときはまだまだ続く。(つづく)

 ◆牧 元一(まき・もとかず)1963年、東京生まれ。編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在は主にテレビやラジオを担当。

続きを表示

2020年7月1日のニュース