志賀廣太郎さん 世話好きで物静かだけど気さくな人柄 酒にタバコ、お風呂好き…一番は「芝居」

[ 2020年5月1日 05:30 ]

志賀廣太郎さん死去

志賀廣太郎さん
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 【悼む】初めてお見かけしたのは7年ほど前。東京・月島の居酒屋「岸田屋」。酒飲みが夕方から店外に並ぶ名店だが、薄い頭髪に眼鏡姿の志賀さんが一人静かに列の中にいた。

 「よく私のことなんか分かりましたね」。あの独特の落ち着いた低音ボイス。聞けば神奈川県川崎市の団地住まい。そこから月島の酒場に一人で飲みに来ており「煮込みに焼き魚、ポテトサラダ、何でもうまい」と目を細めた。その後、紙面で新たなグルメ企画を考えていた時、都内の高級ホテルのラウンジで会ったら、雪駄(せった)を引っかけてペッタンペッタンと音を立て現れた。

 無精ひげにチェック柄の綿シャツとジーパン。武骨な風情で、いまどき珍しい両切りのピースをスパスパとうまそうに吸う。酒飲みだけど甘党で、ホテルのケーキに舌鼓。「どこがうまいとか言える身分じゃないので、スーパー銭湯巡りで一杯みたいな企画ならいいですね」と笑った。

 舞台の設営や受付、食事作りまで何でもやる世話好きで、酒場で初めて会った相手でも気に入ったら自宅まで連れてっちゃう。物静かだけど気さくな人柄は、大学の演劇科講師から40歳目前で年の離れた若者がいる劇団に飛び込んだ、その経歴からもうかがえる。

 入院中、楽しみに見ていたのはNHKの朝ドラ「エール」。関係者によると、その時間に見舞いに行くと「ちょっと待ってて」と終わるまで待たされたという。酒もタバコもお風呂も好きだが、やっぱり芝居が一番だった。 (文化社会部長・阿部 公輔)

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2020年5月1日のニュース