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リバースすると…

ライトアップされた掛川城。右下が王将戦の対局室
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 【我満晴朗のこう見えても新人類】藤井聡太四段の大活躍で有名になった言葉のひとつが「ひふみんアイ」だろう。将棋の対局中、相手方に移動して盤面を反対方向からチェックし、自らの指し手に生かすワザだ。ご存じ加藤一二三・九段の十八番(おはこ)で、藤井四段も度々さりげなく試みている。対照的に全くしない棋士も多い。次の一手をひねり出す際の考慮方法は人それぞれに存在する。

 1月初旬の王将戦取材中、興味深いケースを目撃した。久保利明王将と豊島将之八段が対戦した1日目。相振り飛車となった序盤でのことだ。

 取材本部の控室で正立会人の郷田真隆九段と副立会人の神谷広志八段が検討用の盤に向かい合って座る。互いの駒組みが完了したとはいえない場面で豊島八段が突然攻撃を開始した。果たしてこの時点での形勢はいかなるものか。「これ、左右を逆にしてみましょうか」。郷田九段がおもむろにつぶやく。最初は何のことだか全く理解できなかったが…。

 両者の飛車が振られているので、左右反転すると居飛車の陣形に近くなる。この隊列で熟考するのが居飛車党の郷田九段にとって好都合ということだった。神谷八段とともに盤面の駒をぱたぱたと入れ替える。その手際の良さとスピードは、さすがプロ棋士とうなるばかり。

 「う〜ん。これ、どう見ても後手(豊島)は持ちたくないですよね」(郷田九段)「あ、本当だ。これはあまり良くないなあ」(神谷八段)。どうも手損感が半端ないのだとか。郷田九段は「左右が変わっただけで印象が全然違う。本譜とは実質的に全く同じなんですけど」と不思議そうに話した。

 それにしても斬新な解析だと思う。ひふみんアイのように前後を入れ替えるのではなく、鏡に映し出すようにして状況を見つめ直す。おそらく郷田九段は実際の対局でも脳内で同じ作業を実行しているのだろう。目前の事象だけでは判断できない「何か」を発見するため、持てる能力を総動員させる。プロの思考能力の深さを垣間見た気がした。

 ふと思った。「ひふみんアイ」に匹敵するニックネームを付けてはいかがだろう。勝手に決断した筆者は脳内でいろいろ考えてみた。「郷田アイ」や「真隆アイ」では平凡過ぎる。「剛直流アイ」または「格調高いアイ」では何を表現しているのかよく分からない。「かがみ(鏡)んアイ」では、あまりにそのまんまだし。結論はいまだに出ていない。

 ところで前述の場面、左右反転の結果は久保王将が指しやすそう、とのことだった。ところが実際は周知の通り豊島八段の快勝。

 将棋の海ってやつ、相変わらず深いなあ。(専門委員)

 ◆我満 晴朗(がまん・はるお)1962年、東京生まれの茨城育ち。夏冬の五輪競技を中心にスポーツを広く浅く取材し、現在は文化社会部でレジャー面などを担当。時々ロードバイクに乗り、時々将棋の取材もする。

[ 2018年1月16日 09:00 ]

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