50歳になる天海祐希に思うこと

[ 2017年4月17日 09:00 ]

テレビ朝日「緊急取調室」制作発表で笑顔を見せる天海祐希
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 【牧元一の孤人焦点】時の流れを痛感する。天海祐希が「10年に1人の逸材」と騒がれつつ宝塚歌劇団を去ってから、いつの間にか20数年が経過していた。

 「今年で50歳になるので、より良い人間になるよう頑張ります」。天海が、主演するテレビ朝日の連続ドラマ「緊急取調室」(4月20日スタート、木曜後9・00)の制作発表会見で語った言葉だ。聞いて驚いた。確かに、8月8日の誕生日を迎えると、50歳になる。存在自体が浮世離れした感のあるあの天海祐希も、凡人の私と同じように50代になるのかと、ちょっと不思議な気分になった。

 普段、宝塚に縁のない私が初めて彼女を真剣に見たのは、1996年に公開された初主演映画「クリスマス黙示録」だった。警視庁の特命で単身、米国に渡り、FBIとともに爆弾犯を追う女性刑事の役で、過去の日本の女優にはない骨太な迫力がスクリーンを通じて伝わってきた。そして、そのりりしく美しいたたずまいにすっかり魅了された。

 「クリスマス黙示録」のパンフレットは今でも自宅の本棚にある。彼女はその中のインタビューでこんな話をしていた。

 「朝、現場に入って、いつ撮影が始まるか分からない。舞台とは違う映画の世界に最初は戸惑いを感じたが、すぐにその緊張感を楽しめるようになった。宝塚時代は、人間の集中力は数時間しかもたないと思ったが、それは違うということを学んだ。これから、いろんな人にいろんな角度から見てもらい、興味を持ってもらえる女優になりたい。視野を広げていきたいので、今は自分がどこに行くのか分からない」

 宝塚を退団し、映像の世界で活動を始めたばかりの彼女の新鮮な思いがうかがえる。当時は「自分がどこに行くのか分からない」と語っていたが、それから着実にキャリアを重ね、今では映像の世界に欠かすことができない女優となった。

 今回が第2弾となる「緊急取調室」の警視庁の取調官は、はまり役のひとつ。本人も「(第1弾を)3年前にやらせていただいて、その時から続けるつもりだった」と明かしている。

 その制作発表会見で、田中哲司や小日向文世ら共演者に囲まれた姿を見て、彼女がいかに大きな存在になったかも再認識した。

 田中は天海について「キラキラしていて、こんな人間になりたいと思う。いつも“てっちゃん”と呼ばれていて、よく考えたら僕の方が年上なんだけど“あまみ”とは呼べない」と話して笑い、天海から「怖いですか?」と問われると冗談交じりに「ぶっちゃけ怖いですね」と話した。

 田中より年上の小日向も天海について「一言で表せば“兄貴”です」と語った。

 このドラマももちろん楽しみなのだが、私個人としては、実際の彼女とは正反対の役柄のドラマを見てみたい。例えば、50歳にして恋に悩み傷つき、もがき苦しむヒロイン…。今の天海祐希なら、それすらも、はまり役にできると思う。(専門委員)

 ◆牧 元一(まき・もとかず)編集局文化社会部。放送担当、AKB担当。プロレスと格闘技のファンで、アントニオ猪木信者。ビートルズで音楽に目覚め、オフコースでアコースティックギターにはまった。太宰治、村上春樹からの影響が強い。

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