内野聖陽「真田丸」家康は葛藤のち手応え 幸村最大の敵「フック効かす役」意識

[ 2016年12月3日 05:00 ]

(上)序盤の「伊賀越え」(第5話)では落人狩りに遭い、必死の形相でわめきながら逃げ続けた(下)時流に乗って天下人への道を突き進む家康。最後まで幸村最大の敵となる(C)NHK
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 NHK大河ドラマ「真田丸」(日曜後8・00)で主役・真田幸村(堺雅人)最大の敵、徳川家康を力演する俳優の内野聖陽(48)。物語序盤は臆病で小心者の家康だったが、豊臣秀吉(小日向文世)亡き後は時流に乗って天下人への道を突き進む。脚本を手掛ける三谷幸喜氏(55)が描いた、大名の風格と気の弱さを併せ持つ「新しい家康像」への思いを明かした。

◆ビビリな姿に「戸惑い」も…物語進むごとに家康自身の成長実感

 これまでの戦国時代を描いたドラマや映画では“たぬきオヤジ”として扱われることが多かった家康だが、今作では心配性でビビりな内面をさらけ出す。生涯最大の危機といわれる「伊賀越え」(第5話)では落人狩りに遭い、必死の形相でわめきながら逃げ続けた。意外な姿に内野も当初戸惑ったが「伊賀越えの場面も手探りだった。すると三谷さんから『最高だ!』とメールがきました。こういう感じの家康を求めてられていたのかと思った。実は天下なんかさらさら狙っていなくて、乱世を生き延びられればそれでいい。一族の安寧のみを考えていたら、いつの間にか偉大になってしまっていた人物」と自身の解釈を明かす。

 前代未聞の臆病キャラで視聴者の心をつかんだが、家康は言わずもがなの天下人。「気が弱いだけじゃ真田の敵にはならない。中盤以降は戸惑った」という。苦悩しながら演じる中、台本を読み進めるうちに“家康自身も成長しているのでは”と感じるきっかけがあった。第33話「動乱」で豊臣恩顧の大名を取り込む場面だ。「(石田三成と対立でも)味方する大名を集めたら思いのほか集まった。『おい、オレっていけるんじゃない?』という場面だった。あの回あたりから家康としてのアクセルを踏みました。自分が次の天下を牛耳って豊臣家を滅ぼしていくのだと」。

 臆病だが威厳のある英傑。相反する部分をどう演じるか。三谷氏の台本を咀嚼(そしゃく)して出した答えは「真田にとっての強敵であり、大大名であるから、そういう風格、威厳、たたずまいを見せながら、ときどき臆病な部分が垣間見えればいいかなと」。絶妙のバランスで人間味あふれる天下人が出来上がった。

◆主役盛り立てる“大役”「どれだけ瞬間、瞬間で印象的な表現できるか」

 家康の側室・阿茶局を演じる女優の斉藤由貴(49)が、敬意を払って「内野さんは役者バカ」というほど芝居への情熱は人一倍強い。過去の大河では「風林火山」(2007年)で山本勘助役として主演を務めた。今作は主人公・信繁(幸村)の最大のライバル役。作品全体の中で主役を盛り立てる役割を内野ならではの視点で語る。

「今回は出番がポツポツで、ときどきドーンと姿をあらわす役。これが非常に難しかった。家康が裏で巨大に存在しているという物語にしないといけないので、出てきたときはインパクトが強くないといけない。とある映画監督さんが、『内野さん“フック”を効かせるのは得意じゃないですか』と言われたんです。“フック”とは広告用語で、短い時間でインパクトを残すこと。主役を中心とした物語を助けるために、どれだけ瞬間、瞬間で人の心を引き付けられるか。どれだけ印象的な表現ができるかという芝居の探求になりましたね」

 最終回(18日)へ向け、徳川と豊臣の大戦は佳境に突入。昌幸と幸村、父子2代に渡り苦しめられてきた真田家との戦いも最終局面を迎える。「敵だ敵だと意識するだけだと、いやらしい悪代官のようになってしまう。三谷さんは必ず家康の正義というか、自分の一族を繁栄させたいという一念だけで生きているバックボーンをつくってくださったので、ただの悪役にならずに済んだ。三谷さんの脚本には、タヌキ面で怖い顔をしているような”ただの悪役になってほしくない”というシグナルがたくさん埋め込まれていた気がする」。クライマックスの家康が見せる姿は臆病なのか、威風堂々とした天下人なのか。目が離せない結末になる。

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