ナオト もう一つの顔は頑固職人 チャラ男のイメージあるけど…

[ 2015年5月31日 13:00 ]

インタビューに答えるナオト・インティライミ

 デビュー5周年を迎え、初のベストアルバム「THE BEST!」を6月10日に発売するシンガー・ソングライターのナオト・インティライミ(35)。オリコン首位、紅白歌合戦出場など5年で十分過ぎる実績を築いてきた。“陽気なお祭り男キャラ”も定着したが、隠れた“もう一つの顔”に迫った。

 初対面はデビュー間もない5年前の初夏。世界一周のバックパック旅などエピソードの宝庫で、インティライミ(太陽の祭り)の名に違わぬ陽気で冒険に満ちた人生談に聞き入った。当時置き去りだった音楽話を掘り下げるべく臨んだ今回、緻密で冷静な“裏ナオト”が浮き彫りとなった。

 シングル全15曲を収めたベスト盤は♪泣いたり~笑ったり~、のサビが印象的な「今のキミを忘れない」などファンならずとも耳なじみのある曲が並ぶ。5年の華々しい軌跡が伝わるが、本人は「こんなもんじゃない、と日々悔しい思いをしてきた」とこぼした。「皆さんに知ってはもらえたけど、セールスは右肩上がりと言えない。昨年あたりから高度成長は止まった」と客観的に分析。もんもんとした思いは曲作りへのバネにかえてきた。

 実は過去にも2回、別の名前でデビューしたが鳴かず飛ばずだった。「“俺、スゲー!”みたいな勘違いで、周囲への感謝に欠けてた」と回想。「何度も出直す自分もしぶといけど、音楽業界の厳しさも痛感した」といい、2010年の3回目のデビュー時には「ラストチャンス」と覚悟した。売れっ子になった今も「いつ急に消えてもおかしくない位置。満足したことはない」と、手綱は締めたままだ。

 ライブではピアノやギターも弾き、抜群の運動神経で踊り、得意の話術で笑わせる。柏レイソルのジュニアユースに所属した経歴を生かし、サッカー番組に出演。俳優業もこなす。何でも来いの自分を“器用貧乏”とネガティブに考えたりもしたが、「一つずつ形になってきて、“器用セレブ”までいかずとも“器用中流”ぐらいにはなれたかな(笑い)。総合力を高めれば個性になり、強みになると、5年たってやっと思えたかもね」

 SMAPに楽曲提供するなどソングライターの才も発揮。「曲のストックは山ほど!アイデアは500以上、一曲として完成してるのはその半分ぐらい」と明かし、「アルバム10枚を同時に作れるアイデアとやる気はある」と胸を張る。王道のJ―POPからオシャレなR&B、マニアックなワールド音楽まで作風は多岐にわたる。自ら編曲し、「エンジニアとは数百のオーダーをやりとりするんだけど、“こんな細かいやつはいない”と面倒くさそう」と笑う。全ての楽器、音程、タイミングにもこだわり最終工程まで絶対に妥協しない。まるで頑固職人だ。

 “ラテン系のチャラいお兄さん”的な世間のイメージにギャップを感じないのか問うと、「めっちゃ感じる。でもバラエティー番組で楽曲制作のこだわりを熱弁したとて、変な空気になるだけだしね(笑い)。そこは徐々に知ってもらえれば」と控えめに答えた。

 失敗を乗り越え“三度目の正直”で挑んだ音楽人生が花開いたのは、真しに歩んできたからこそだろう。

 観客の心を瞬時につかむ太陽のような明るさも彼の真の姿だが、真面目さもしかり。普段は見せない陰の努力や?藤を知れば、底抜けに明るい表の顔もより魅力的にみえてくる。

 ≪エチオピア旅で“脱・デジタル依存”に目覚める≫2年前のエチオピア旅で、裸で暮らすハマル族と生活し、“脱・デジタル依存”に目覚めた。携帯電話の使用頻度を半減し、無駄なネットサーフィンをやめると「飯がうまい。風呂が気持ちいい。景色がきれい。音が心地良い。無駄な情報で詰まってた感性の毛穴が開いた感じ」。レコーディングでも「直感はさえざえ!」と笑顔。ベスト盤にも収録した「恋する季節」は「歌詞ができた直後にとったとりあえずの仮歌を本採用した。歌どりもスイスイいく」と、思わぬ好影響を喜んでいた。

 ◆ナオト・インティライミ(本名・中村直人=なかむら・なおと)1979年(昭54)8月15日、三重県生まれの千葉県育ち。中央大卒。2010年4月、「カーニバる?」でデビュー。12年4月発売のアルバム「風歌キャラバン」がオリコン初登場1位、同12月にNHK紅白歌合戦出場。ことし1月公開の映画「神様はバリにいる」(監督李闘士男)に出演した。

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