[ 2010年10月24日 06:00 ]

生き埋めの刑に処せられたラダメスとアイーダ、その冥福を祈るアムネリス(右)※写真はすべてNHK交響楽団提供、公演写真は(C)竹原伸治

 コンシェルジェが総括します。

「良い演奏でも比較的落ち着いた反応が多いN響の定期公演でここまで会場が沸くのは、ステージから訴えかけるものが大きかったことの証といえる。小谷さんがある場面では腹を立て、また別の場面では共感を得ることが出来たのは演奏会形式にもかかわらず、物語の情景が眼前に展開されているかのように錯覚させられるほどの説得力にあふれたサンティの音楽作りにほかならない。演出主導の今のオペラ界にあって、やはりオペラは歌唱や演奏が最も重要な要素であることを再確認させられるステージであった。なまじ変な読み替え演出が施されているよりも断然、作品の本質に迫ることができたのは疑いのない事実。サンティが巨体を揺らし不器用な身振りで歌手やオケに指示を出す姿と結び付けることが難しいほど、紡ぎ出された音楽は表情に富み、歌心にあふれていた。それはあたかも作品と彼自身が一体化しているかのよう。彼に向かって歌手、オーケストラ、合唱が渦巻くように同化していく。そこには自分の解釈を前面に打ち出そうとの“私心”は微塵もなく、ヴェルディの芸術に心から奉仕する使徒の姿があった。まさに長いキャリアを重ねたからこそ初めて実現しうる至芸だった」。

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2010年10月24日のニュース