[ 2010年10月24日 06:00 ]

歌手たちも暗譜で臨み多彩な演技を披露。迫真の掛け合いをするマルフィージ演じるアイーダ(左)とアムネリス(パスクアリーニ)

 当夜の公演では題名役のアドリアーナ・マルフィージが恋人ラダメス(サンドロ・パーク)と、父でエチオピア王のアモナズロ(パオロ・ルメッツ)との間で板挟みに遭い、嘆きうろたえる姿、ラダメスに身を寄せて生き埋めになっていくしっとりとした演技。通常のオペラにひけをとらないほどの表現力を感じさせてくれました。

コンシェルジェによると「マルフィージはサンティのN響客演のたびに一緒にステージに立つことが“恒例”となっているソプラノ。以前、同じく演奏会形式でプッチーニの“ラ・ボエーム”を取り上げた時にはミミを演じ、ヒロインの薄幸を切々と歌い上げ、高い評価を得た。とはいえ、ミミを歌う歌手がドラマティックで強い声が求められるアイーダも歌う、というのは声質、声量などの面から少し無理があった。前半ではそれがやや気になったが、上演が進むにつれてサンティの作り上げるアイーダの世界に彼女が率先して溶け込んでいき、最後にはさしたる不満を感じさせないくらいのパフォーマンスを披露していた。もちろん、小谷さんが感じたようにステージ上演同様の多彩な演技で、歌唱面の弱さをカバーしていたことも見逃せない要素だった」そうです。
一方、歌手で強い印象を残してくれたのはアムネリス役のセレーナ・パスクアリーニです。第2幕のラスト、有名な「凱旋の場面」の終りで大合唱と全開のオーケストラにも負けない強い声で聴衆を圧倒。第4幕のクライマックスでは心の奥底から絞り出したうめきのような声で、生き埋めの刑に処されたラダメスの冥福を祈る。この物語の主役は実はアムネリスだったのではないか、と思わせるほどの迫真性がありました。
ラダメスを演じた韓国の若手テノール、サンドロ・パークはその豊かな声を巧みに使って若き将軍の感情のゆらめきを120%表現していました。アモナズロ役パオロ・ルメッツら他のキャストもサンティの棒の下、一体となって持てる技術を存分に使って細部まで疎かにしない歌唱と演技を披露していました。

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2010年10月24日のニュース