ブレない美輪明宏「真理は永久に変わらない」

[ 2010年3月22日 06:00 ]

スポニチ文化芸術大賞グランプリに輝いた美輪明宏

 【スポニチ文化芸術大賞】紡ぎ出される一語一語は精巧なパズルのピースのようだ。コラム「明るい明日を」には、その問題を的確に批評するためにはそれしかあり得ないというような研ぎ澄まされた言葉が並ぶ。

 「心がけているのは、なるべく漢字を多くしないこと、ひらがなの語り口で書くことです。有識者と称する人たちは、専門用語を羅列しがちですが、それでは幅広い読者に伝わりません。それと大切なのは、くすっと笑えるユーモア」
 視点は独特だ。誰もが気づかないようなところに鋭く目が届く。今年に入って反論も含め読者の反響が大きかったのが、与謝野馨元財務相を批判した回(2月21日付)。
 与謝野氏は鳩山首相が母親から資金提供を受けていた問題で、鳩山邦夫元総務相から聞いた話をもとに国会の予算委員会で首相を追及。これに対する各マスコミなどの評価はおおむね肯定的だったが、このコラムで「その中身は本来明かされることはないと信じられた上での鳩山家の内輪話。多くの人が与謝野氏のことを“親でも売りかねない信用できない男”と感じたでしょう」と切り捨て、予算委ではもっと議論すべき国民にとって重大な問題があると訴えた。
 「物事は見方によって違います。加害者と被害者の論理が違うように、ある人にとっては正しいことでも、ある人にとっては間違いになる。義経の八艘(はっそう)飛びではないけれど、自分があちこちに同時に存在し、それぞれから視線を送った場合、物事がどう見えるか…。そこから妥当な答えをすくい上げるのです」
 判断の基準は「常識」ではなく「真理」だ。
 「私の言っていることは何十年も変わっていません。みなさんからよく“美輪はぶれない”と言われますが、それは真理が基準だからです。常識は、勝てば官軍、負ければ賊軍で、時と場合によってコロコロ変わりますが、真理は永久に変わらないものです」
 もちろん、容易に真理が分かるはずもない。子供の頃から学んだキリスト教や仏教、生まれ故郷・長崎での被爆や色街での貴重な見聞、上京してからの極貧生活、歌手や俳優として地道な活動などを経てたどり着いた。
 その意見が、テレビにレギュラー番組を持つなどして広く届くようになったのは、ここ10年のことだ。
 「昔はゲテモノ扱いされ、何か意見を言っても“生意気だ”と無視されました。だから今回、私の意見に共感してくださる方が多くいて賞に選んでいただいたことがうれしい。開けた時代になったことの表れだと思います」と受賞を心から喜んでいる。

 ◆美輪 明宏(みわ・あきひろ)1935年(昭10)長崎市生まれ。国立音大付属高校中退。17歳で歌手デビュー。「メケメケ」(57年)「ヨイトマケの唄」(66年)がヒット。俳優としても故・寺山修司さんの劇団天井桟敷の旗揚げ公演(67年)に主演し、以後、演劇、リサイタル、テレビ、ラジオ、講演などで幅広く活動。97年の舞台「双頭の鷲」のエリザベート王妃役で読売演劇大賞優秀賞を受賞。著書に「紫の履歴書」「愛と美の法則」など。

続きを表示

2010年3月22日のニュース