大谷ギアが選手の肘を救う ワコール社「CW―X Arm Brace」商品化「必要とする選手の力に」

[ 2025年12月12日 02:30 ]

CW-Xを着用して試合に臨む大谷
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 ドジャース大谷翔平投手(31)が右肘手術後に患部を保護するために使用している特注サポーターが日米プロ野球選手向けに商品化されることが11日、分かった。昨オフに契約したワコール社が大谷のために開発した「CW―X Arm Brace」で、6月の投手復帰を支えたギア。故障予防にも効果が期待でき、今後は肘を故障した選手らの必需品になることも予想され、その製作秘話やこだわりに迫った。(取材・構成=柳原 直之)

 東京で開幕戦を戦い、トロントで劇的なワールドシリーズ(WS)連覇を成し遂げたメジャー8年目。大谷の右肘はずっと黒い特殊なサポーターで覆われていた。手元のダイヤルで肘の可動域をミリ単位で調整し制御する、独自のワイヤ構造の一品。開発のきっかけは「肘の内側を守り、調節機能を備えたサポーターをつくってほしい」という大谷からのリクエストだった。

 23年9月に2度目の右肘じん帯再建手術(トミー・ジョン手術)。復帰後の投球時、打撃時のパフォーマンスを支える新たなサポーターを探していた。依頼を受けたのは「CW―X」チーム。試作、検証、調整を幾度も繰り返し、3月後半に肘の内側だけに調節機能を搭載した「投手用」と、内外の両側に搭載した「打者用」のベースモデルが完成した。

 ただ、そこから完成への道のりは簡単ではなかった。「高い強度に耐えうる構造に最初は苦労しました」と担当者の清家望さん。投手復帰前の「ライブBP」(実戦形式の打撃練習)登板、その後の実戦登板ごとに大谷からフィードバックを得て、改良を重ねる日々が続いた。投手復帰3戦目だった6月28日のロイヤルズ戦でメジャー自己最速101・7マイル(約164キロ)を計測した頃に現在のモデルに近い形が完成。WSの2度の登板も乗り切ったという。

 商品化へのきっかけは、使用感に手応えを感じた大谷の「同じ悩みを抱える選手にも役立つのでは?」という提案からだった。将来的な一般販売を見据え、まずはメジャーリーガーをはじめプロ選手を対象に「投手用」の販売をスタートする。大リーグは投手の4人に1人がトミー・ジョン手術経験者といわれ、日本でも増加傾向。大谷は同社を通じ「マウンドに立つときに“安心して投球に向き合える”と感じられるアイテムです。今後も必要とする選手の力になればうれしいです」とコメントした。リハビリを含めた課題解決への“新兵器”として期待され、同社にはメジャー10球団以上から問い合わせがあるといい、今後、肘などを故障した選手の“世界標準”アイテムになる可能性もある。

 来年3月のWBCでの連覇、そして二刀流完全復活で挑むWS3連覇へ。大谷が頼れる“相棒”とともに、26年シーズンに向かう。

 ◯…「CW―X Arm Brace」は来年2月2日から専用ウェブストアでプロ野球選手、メジャーリーガーを対象に販売される。初回購入時には対面での商品説明やサイズ測定を実施。最適なフィッティングを確認した上で、購入に進む仕組みだ。サイズはM~4Lの5サイズ展開、価格は12月11日時点で未定。商品化前から話題を呼び、今季は阪神・大山や、5月に走者と交錯して左肘を痛めた巨人の岡本が復帰後に使用した。

 ◯…清家さんはワコール社と契約を結ぶイチロー氏(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)を現役時代からサポートしている。「大谷選手は動きの上で大事にしていることは骨盤、股関節、肩甲骨と話しています。イチローさんも同じような話をされていました」と共通点を明かした。大谷は同社製のスポーツタイツと5本指ソックスも着用。同社インタビューで「股関節周りが支えられ、安定していることは、安心して動ける理由なのかと思う」とコメントしている。


 《まるで自分の体の一部…驚きのフィット感》ワコール社が大谷に提供した「CW―X Arm Brace」を試着させてもらった。大谷用で右腕の腕回りのサイズは42センチ。33センチの記者にはかなりブカブカで「大谷選手の腕はこんなに太いのか!」と驚き、自分の腕の細さを嘆いたが、さらに驚くべきはそのフィット感だった。

 スポーツタイツなど、テーピング原理を搭載する同社の「CW―X」シリーズで、そもそも自分の体の一部になったような感覚だった。手元のダイヤルを回すと、肘の可動域がミリ単位で制御される感覚もすぐ分かった。さらに、手首はテープで固定され、袖口はシリコーン素材。シャドーピッチングの動作を繰り返しても、全くズレることがなかった。

 大谷からの要望を反映して完成した特別モデル。それを自身だけのものにせず、野球界の未来を考え「同じ悩みを抱える選手にも役立つのでは?」と提案した心意気にも拍手を送りたい。 (MLB担当・柳原 直之)

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