【内田雅也の追球】「秋祭り」の準備は整った。

[ 2025年10月12日 08:00 ]

冬芝が芽吹き、美しい甲子園球場の芝生
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 甲子園球場の外野には鮮やかな緑が広がっていた。グラウンドを管理する阪神園芸甲子園施設部長の金沢健児が「今日の芝が1年で最高だと思います」と話した。

 チームがレギュラーシーズン最後の遠征に出ていた9月22日、いわゆる夏芝の密度を薄め、冬芝の種をまいた。甲子園で引き継がれてきた二毛作の手法である。

 かつて甲子園の芝は11月から3月にかけて枯れてしまっていた。名物グラウンドキーパーだった藤本治一郎が1982(昭和57)年9月、夏芝の上に冬芝の種をまく「オーバーシーディング」を採り入れ、年中、緑のじゅうたんのような芝を保てるようになった。

 今回まいた種は9月末に芽吹き、これからしばらくが最も美しい時期だという。原口文仁の引退試合でもあったシーズン最終戦(2日)、そして15日開幕のクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージに合わせ、舞台を整えていたのだ。裏方たちも本番への準備を怠らない。

 緑の芝が映えるなかでの練習では、シート打撃が行われた。主力選手は実戦感覚を養おうと打席に立ち、投手に対した。

 練習は非公開でスタンドは無人である。せき払いをしても銀傘に響くような静けさで、緊張感が高まっていた。

 球場内通路で球団本部長の嶌村聡に出くわした。「1週間前から気持ちを高めています。ですから今日あたりから、相当きています」と胸のあたりを指さした。フロントの背広組も本番態勢に入っている。

 阪神ファンだった作詞家・阿久悠に『甲子園の雀(すずめ)』と題した詩がある。低迷期だった1991年7月、本紙に連載した『真情あふれるタイガース改造論』の最終回で書いた。

 <甲子園の雀が顔を寄せて/春と夏のまつりを語る/秋にもまつりがあればいいと/毎年毎年思いながら>

 春夏の祭りは高校野球の甲子園大会だ。秋は日本シリーズである。<本拠地の雀はもっと切実に、阪神タイガースを思っているに違いない>。

 いまの甲子園の雀たちは「秋祭り」を知っている。一昨年の日本シリーズの熱気を知っている。

 監督・藤川球児はCSを「秋の大運動会」と表現していた。運動会はお祭りだ。出る人も見る人も皆、楽しみにしている。さあ「秋祭り」の準備は整った。 =敬称略=
 (編集委員)

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