【内田雅也の追球】「クラッチ」生む姿勢

[ 2025年7月21日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神2―1巨人 ( 2025年7月20日    東京D )

<巨・神>4回、交代を告げる藤川監督(撮影・大森 寛明)
Photo By スポニチ

 クラッチ(clutch)は「つかむ、しっかり握る」といった意味である。野球で使う時は「重要な場面」といった意味になり「勝負強さ」を示す。クラッチヒッターは好機に強い打者だ。

 阪神監督・藤川球児が先日「クラッチアウト」という言葉を紹介していた。大リーグ時代に知ったのだろうか。甲子園球場での練習中、記者団との雑談だった。「大事なアウト」という意味だという。そして、今の阪神投手陣は「クラッチアウトを奪うことができる」とたたえていた。

 前夜に続き、投手陣は再三ピンチで決定打を与えなかった。先発ジョン・デュプランティエは制球が乱れ、投手の赤星優志にも四球を与えるなど、3回まで5四死球。それでも2回裏1死一、二塁、3回裏1死満塁を無失点でしのいだ。

 疲労をみてとった藤川は4回から継投に出た。2番手・岩貞祐太は4回裏、1死満塁を招いたが最少失点で切り抜けた。

 5回以降は自慢の救援陣が危なげなく、投げきった。連投の湯浅京己、及川雅貴、石井大智、岩崎優とつないで、1点差で逃げ切った。シーズン序盤は負けが先行していた1点差試合も強さを発揮しており、これで14勝目(17敗)となった。

 やはり、カギはクラッチだ。大リーグでは「なぜクラッチヒッター(勝負強い打者)が存在するのか」をテーマに長年研究が進むが、原因は突き止められていない。同様にクラッチアウトを奪えるピンチの強い投手はどう作られるのだろうか。

 藤川は前夜、ピンチに粘り強さを発揮する投手陣の源を「向上心」と言った。日々、野球に取り組む姿勢である。

 それは「常に技を磨くと共にチームのためにプレーする事」「進取の気性に富む事」……ということか。これは水原茂が1961(昭和36)年、東映(現日本ハム)監督就任で授けた「フライヤーズ訓」である。10項目あり、最後は「野球を通じて人間完成ということを忘れるな」。佐山一郎『闘技場の人』(河出書房新社)にあった。張本勲(本紙評論家)らも感じ入り、62年、球団初優勝を果たした。

 この日は49年、シベリア抑留にあった水原が英彦丸で舞鶴港に引き揚げた日だった。

 藤川はきょう21日、45歳となる。まだ若い青年指揮官だが、かつての名将にも通じる部分が垣間見える。 =敬称略=
 (編集委員)

続きを表示

「阪神」特集記事

「大谷翔平」特集記事

野球の2025年7月21日のニュース