MLBで勃発した“ハッスル論争” ヤンキース・チザムは「70%理論」で良いプレーはできると主張

[ 2025年6月14日 13:03 ]

ヤンキースのチザム(AP)
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 MLBでハッスル(全力疾走)論争が起きている、とAP通信が13日(日本時間14日)に報じた。ヤンキースのジャズ・チザム外野手が「70%理論」を主張しているからだ。

 「健康を維持しながら好プレーを続ける鍵は常に70%の力でプレーすること。守備も攻撃も走塁も全部70%。そうすれば健康でいられる。振りすぎることもなくなるし、ケガも減る。70%でも素晴らしいプレーはできる」

 実際、チザムは負傷者リスト(IL)から復帰して以降、好調を維持している。斜腹筋の損傷やハムストリングの肉離れも防げる。だが、野球選手はリトルリーグの頃から「全力を出せ、110%の力を出せ」と教えられてきたし、「ハッスル」は野球という競技の根幹の文化だ。メッツのスター選手フアン・ソト外野手が、フェンウェイ・パークのグリーンモンスター上部に直撃した打球で全力で走らなかったとき、15年総額7億6500万ドル(約1100憶円)ももらっていながらハッスルしていないと批判された。

 エンゼルスのロン・ワシントン監督のような「古き良き時代」の野球人には到底受け入れられない。「いつでも100%でプレーしているように見せることが大事だ。本当は70%の力でやっていたとしても、それを他人に言っちゃダメだ」。かつては手を抜けばチームメートの信頼を失い、監督のドッグハウス(干されること)入りは避けられなかった。

 ワシントン監督は言う。「ハッスルの定義が変わってしまった。昔だったら、走らなかった選手なんて絶対許されなかった。今は違う。今はたとえ選手がひどい態度をとっても、そのチームのベストプレーヤーだったら監督はベンチに下げたくない。その瞬間にチーム全体が崩壊しかねない。それが現実だ。昔は違った。走らなければ、その瞬間にベンチ行きだ。そして、それを処理していたのは首脳陣じゃなくて、選手たち自身だった。監督でもコーチでもない、チームメートが取り締まっていた」。

 ダイヤモンドバックスのトーリ・ロブロ監督は、基本的には選手には毎日100%を求めているが、それはその日の体調に応じた100%でいいと語る。たとえば、最近ではコービン・キャロル外野手が遠征中に太腿裏の張りを抱えていた。「その時のキャロルには“今持っている全力でやってくれればいい”と言った。もちろん選手を守るのも我々の役目だ」。

 年俸が初めて平均500万ドル(約7億2000万円)を超えた今の時代、選手の体は高価な商品でもある。「ハッスルは当然」という従来の価値観と、「全力プレーでケガをするリスクを避けたい」という現実的な選手のマネージメントがせめぎ合っている。

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