【甲子園】滋賀学園が夏初勝利 開幕戦で逆転 2番手の高橋侠が天国の母へを届けた力投

[ 2024年8月8日 05:00 ]

第106回全国高校野球選手権大会第1日 1回戦   滋賀学園10―6有田工 ( 2024年8月7日    甲子園 )

<有田工・滋賀学園>初戦突破し、笑顔で駆け出す滋賀学園ナイン(撮影・中辻 颯太)
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 甲子園100周年の大会が開幕し、開会式に続いて1回戦3試合が行われた。開幕戦では滋賀学園(滋賀)が有田工(佐賀)に10―6で完勝し、同校の夏初勝利を「100歳甲子園」初勝利で彩った。2番手・高橋侠聖(きょうせい=3年)が好救援し、試合の流れを引き寄せた。

 天国の母に届けと投じた88球の力投は、記念すべき「100歳甲子園」初勝利をもたらした。滋賀学園の背番号10左腕・高橋(人ベンに峡の旧字体のツクリ)が、4回に3―4と逆転され、なおも2死一、三塁で2番手として登板した。「この場面で登板できるのは信頼されている証」と自信を胸に直球で空振り三振を奪い、8―4の8回2死満塁では一ゴロに仕留めた。5回1/3を2失点の熱投で逆転勝利を演出し「みんなが憧れる聖地で自分の投球ができた。天国にいるお母さんにもしっかりと報告したいと思います」と青空を見上げた。

 5歳のときに母・千穂さんが、がんにより23歳の若さで他界した。最後の別れが近づいた頃、母から伝えられた。「野球をやる姿が見たいな」。当時、妹を含めた家族4人で野球を楽しむことがよくあり、母は愛息が楽しそうに球を追いかける姿が好きだった。そして、母が亡くなった後に「野球チームに入りたい」と父・伸浩さんにお願いした。

 別れの直前、母からもう一つの願いを伝えられていた。「お母さんの大好きな野球で、お父さんを支えてあげてね」。その言葉を聞いたときから夢はプロ野球選手だ。父が働きに出ている平日は一人で公園に向かい、壁当てをするなど練習に励んだ。野球に集中するために、友人がおらず県外出身選手の多い滋賀学園に進んだ。登録選手20人のうち滋賀出身は高橋(人ベンに峡の旧字体のツクリ)のみ。15年ぶり2度目の出場での夏初勝利に「県民の思いも背負って投げました」と胸を張った。

 少年野球の頃から母の遺骨の入ったペンダントをかばんに入れて戦っている。三塁側アルプス席から応援した父の伸浩さん(44)は、投球を見つめながら「(母が)空から見てくれているのは分かっていると思います」と言った。さぞ母も見守りやすかったであろう晴れ渡った青空のもと、「100年甲子園」の開幕を告げる熱投を披露した。  (河合 洋介)

 ≪プロ注目の内野手、岩井天史が攻守で躍動≫
 ○…100周年甲子園の初安打は滋賀学園の3番・岩井天史(てんすけ)が放った。初回1死二塁で右前打を放ち、先制機を演出。「チャンスをつなごうと打席に入った。歴史に刻めたことを驚いています」。プロ注目の大型内野手は打っては2安打。さらに、守っても9回に2点を奪われ、なおも1死一、二塁で中前に抜けようかという打球を好捕し、併殺を完成させて試合を締めくくるなど攻守に躍動した。

 ≪陸上男子800メートル日本記録保持者の落合が応援≫
 ○…滋賀学園の三塁側アルプスでは陸上男子800メートルの日本記録(1分44秒80)保持者の落合晃(3年)が、クラスメートを応援した。「多胡君、岩井君、作田君やキャプテンの門田君が同じクラスです。陸上じゃ味わえない応援で、チームスポーツだなと思いました」。野球部控えメンバーのすぐ後ろで声を合わせて応援に参加。「楽しい。一丸となって声を出して」と開幕戦勝利を喜んだ。落合が7月31日に全国高校総体で出した記録は、パリ五輪派遣標準記録にあと0秒10に迫る快記録だった。

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