磐田東・赤堀新監督 頂点を「狙わないと失礼」 センバツ初V健大高崎コーチから就任

[ 2024年4月12日 04:30 ]

ナインに指導する赤堀監督(中央)
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 31歳の若き監督が日本一の魂を注入する。静岡県三島市出身で今春選抜高校野球大会で初優勝した高崎健康福祉大高崎(群馬)の赤堀佳敬コーチ兼副部長が7日、保健体育教諭として磐田東(磐田市)の新監督に就任した。指揮を執るのは初。20日に開幕する第71回春季高校野球静岡県大会が初采配となる。立場や環境の変化にともないナインとどう接し、強化を図っていくのか。今後のビジョンを聞いてみた。(構成=小澤 秀人)

 ――就任おめでとうございます。監督としての初采配がいきなり県大会ですね。予選は見ましたか。

 「見てないです。練習に先入観が入ってしまうので」

 ――今週の練習から見たチームの印象は。

 「ノックとか見た時に勝負できる子はそろっていて、勝ちたい目をしている子も多いなと感じました。バッティングの中で“これとこれだけはやろう”という話をした時に、何とかクリアしようとする姿勢が見えました。自主練でも課題に対してやっていこうという姿がありました」

 ――打撃においてこれとこれとは?

 「自分のストライクゾーンを知ってほしいこと。ハーフ打撃などでボール球を打たない。それとスイングキャンセルの動作を身につけてほしいということです。バッティングを良くするためには絶対に必要になってきます」

 ――スイングキャンセルをもう少し具体的に説明するとすれば。
 「打ちにいってやめるのではなく、そのまま振ったらボールをつかまえられるところまでバットを持ってきてほしいんです。しっかり狙いにいって、前の骨盤が我慢してボールだから打たないという動作。そこまで精度を上げてほしいんです」

 ――健大高崎の選手はできていたか?

 「彼らは入学当時から言われてきたんで。甲子園期間中もそれができなかった子は調子が悪かったんです。一つの指標にもなりますし、見逃す動作ができるかどうかです。140キロの世界。投手の手からボールが離れた瞬間、0・35~0・40秒でベースに来るので。投手が投げるボールを一球も無駄にしてほしくない。どんな悪いボールでもタイミングを合わせてほしいんです」

 ――それをクリアすることでいろんな可能性が広がるんですね。
 「バットが止まるようになれば、確実に選択の幅が広がります。カウントもつくりやすくなると思います。投手に球数をたくさん投げさせること。その上で良いボールを打っていくことが大事です」

 ――目指すべき姿は打撃のチーム?

 「打てるチームじゃないと勝てない。ただ攻撃は最大の防御と言いますが、それは守りと走塁ができていないとそうとは言えないと思っています」

 ――常葉菊川(現常葉大菊川)が07年選抜で優勝した当時のようなチームですね。

 「戦争も一緒で、自陣がしょぼかったら安心して攻められないですよね。圧倒的な守りと走塁があってこそ、主の攻撃ができるということです。だからまずやるのはそこです」

 ――盛岡大付、健大高崎では“甲子園請負人”コーチに徹してきましたが、今度は立場が監督に変わりました。

 「基本的には盛大の関口先生と健大の青柳先生がいての自分なんで。ずっと後ろで見てきたので、2人の形を受け継ぎながら自分の色も出していければと思っています。ちゃんとリスペクトしながら勝負していければと思っています」

 ――以前から“チャンスがあれば静岡で監督を”と話していました。まだ31歳。夢がありますね。

 「実は関口先生も青柳先生も31歳で監督になっているんです。これはご縁だなと。2人とも後押ししてくれまして。盛大は8月に練習試合で来てくれると言ってくれました」

 ――“日本一”という勲章を引っ提げての監督就任ですが?

 「健大の子たちと比べるとこの子たちにとってストレスになってしまいます。僕が伝えていかなきゃいけないのは日本一の向こう側です。僕がこれからこの子たちをどう導いていくか。日本一とか優勝とか(過去の栄光は)一切ないです。それでもう一回あの舞台に戻れたら最高です」

 ――早速県大会が始まります。

 「まずはシードを獲りにいくことが絶対に大事。この子たちの自信になる大会にしたい。チームにとって何でもいいんですが、“これで勝負できるな”という武器を固められる舞台にしたいです」

 ――プロ注目右腕の寺田投手がいます。磐田市内から初の甲子園も夢ではない。

 「やらなきゃいけない。子供たちあっての自分たち。勝たせてあげなきゃいけないですし、良い思いをさせてあげたい。我々指導者はエベレストに何回も挑戦できますし、天候が悪ければ引き返すこともできる。一生に一度しかない子供にとっては引き返すことができない。絶対に上り詰めないといけない。その年その年で狙わないと失礼です」

 ――静岡は優勝候補に挙がる学校数が多いですし、実力に運も必要になりそうです。

 「徳を積むじゃないですけど、運に見放されないようにやっていかないと」

 ――そのための手段は何か考えてますか。

 「座禅します。無になる時間をつくってあげて、さまざまな考えが分散せず集中できるように継続していきます」

 ≪元ヤクルト・宮本氏からの金言≫赤堀監督にとって、“家宝”としての支えが、元ヤクルト宮本慎也氏(53=東海大菅生臨時コーチ)から贈られた「失敗を恐れず挑戦あるのみ」と書かれた色紙だ。縁あって知り合い、静岡で勝負する直前、一緒に食事をし「めちゃめちゃ苦労することもあるけど、その先に見える栄光をつかむために今は地盤を固めてやり切るしかない」と背中を押された。「あそこまで極めた人が僕ら端くれにも質問をしてくる。もっと勉強しなきゃいけないです」と肝に銘じている。

 ◇赤堀 佳敬(あかほり・よしのり)1993年(平5)4月1日生まれ、静岡県三島市出身の31歳。三島南小3年から三島向山少年野球クラブで野球を始める。三島南中―伊豆中央―中京大。高校、大学時代は内野手。大学卒業後は保健体育の非常勤講師として磐田南に赴任。その後は盛岡大付、高崎健康福祉大高崎で副部長として計6度の甲子園出場、関東大会3度優勝、明治神宮大会準優勝に貢献。1メートル78、75キロ。右投げ左打ち。独身。

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