伊東勤氏 史上初「W規定到達」を可能にしたエンゼルス大谷の引き出しの多さ

[ 2022年10月6日 18:20 ]

<アスレチックス・エンゼルス>今季最終戦を終え笑顔でベンチを後にする大谷(撮影・白鳥 佳樹)
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 プロ入りした2013年から5年間、ロッテの監督として大谷という選手を身近で見ていた。凄い選手であり二刀流をこなす身体能力に感心していたが、まさかメジャーの舞台で「ダブル規定」に到達してしまうとは。我々レベルでは考えつかない偉業だと思う。

 1年間プレーすれば万全の状態ではいられない。死球もあるし自打球が当たることもある。この試合もそうだったが指のマメを潰すこともある。それでも大谷は休まない。体の強さもあるが、大谷は自分の体のすみからすみまで知り尽くしていて、どこを痛めたらどういう方法で対処したらいいのか。引き出しがたくさんある。

 投手としての進化は目を見張るものがある。従来の直球とスプリットの組み立てから、今年はタテ変化と腕を少し下げ横に大きく曲がる2種類のスライダーを投球の軸にした。シーズン途中からはツーシームを投げはじめ投球の幅を広げた。この試合では前回ノーヒッターの夢を断ち切られたカペルには徹底したスライダー攻め。リーチのある3番ブラウンにはツーシームを内角に3球続けて詰まらせた。相手をよく研究しているし、この球を打てないと思ったらしつこく攻める。その感性も鋭い。変化球のバリエーションと精度が上がってきて三振だけでなくゴロアウトも多く取れるようになった。ピンチを作っても最少失点で切り抜ける。長いイニングを投げられる投球術を身につけたことが15勝につながった。

 打撃面は本塁打が昨年の46本から34本と減ったが打率は1分6厘上がっている。印象に残ったシーンはジャッジとの直接対決が注目された8月31日のヤンキース戦。エースのコールから2年連続30号となる会心の逆転3ラン。鳥肌が立った。その時、感じたのは優勝争いの中で大谷にプレーしてほしいということ。しびれるような環境でもう一段階上の大谷の能力が引き出されるのではと思う。エンゼルスには戦力補強をしてほしい。来季も進化を続ける大谷を楽しみにしている。(スポニチ本紙評論家)

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2022年10月6日のニュース