大経大・才木 加速する153キロ直球 昭和感漂う令和の“炎のストッパー”

[ 2022年10月6日 06:30 ]

大経大の才木海翔投
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 【菊地選手ドラフト「隠し玉」発掘】大経大の才木海翔投手は、品行方正なアスリートが増えた令和の野球界にあって、「昭和」の香りが漂う。本人は「車も歌も古くて渋いやつが好き」と語り、よく聴く曲として安全地帯の「恋の予感」を挙げた。緊張とは無縁のふてぶてしいたたずまい、時に相手ベンチを威嚇するように吠える姿は、今どき珍しい勝負師のムードがある。

 中学まで大阪で過ごしたが、敬語もろくに使えず学業成績も悪い問題児だった。だが、北海道栄に越境入学し、指導者や先輩に徹底的に人間教育を施されて改心。のちに中学校にあいさつに出向くと、教員たちから「才木が敬語を使えている!」と感心されたという伝説が残るほどだ。

 大経大では「本気でプロに行きたい」と貪欲に練習に取り組むようになり、高校時代に68キロだった体重は86キロまで増量。ストレートの最速は153キロまで増したが、捕手に向かって加速していくような切れこそ最大の武器。気持ちの乗った快速球は空振りを奪える球質で、どちらかといえば勢いで抑えるリリーフタイプだろう。

 本人が身上としているのは、「ルパン」である。他人のフォームを見て「いいな」と感じた部分を盗み、自分に取り入れる。その貪欲さがあだとなって、今季はフォームのバランスを崩し本来の投球ができているとは言いがたい。だが、才木本人は「引き出しを増やしたい」とどこ吹く風。一流選手は変化を恐れないが、才木にも同様のマインドが備わっている。

 今年3月にプロとのオープン戦で吉田正尚(オリックス)と対戦し、そのオーラに「ほんまカッコええ」と刺激を受けた。どこか懐かしさを覚える“炎のストッパー”は大舞台でこそアドレナリンが分泌され、真価を発揮するはずだ。

 ◇才木 海翔(さいき・かいと)2000年(平12)6月10日生まれ、大阪府豊中市出身の22歳。庄内小3年から庄内ゼッツで野球を始め、豊中六中では準硬式野球部に所属。北海道栄では3年春からエースも甲子園出場経験なし。大経大では1年春からリーグ戦登板し、3年秋に最優秀防御率のタイトル獲得。50メートル走6秒9。1メートル81、86キロ。右投げ右打ち。

 ◇菊地選手(きくちせんしゅ)1982年(昭57)生まれ。本名・菊地高弘。雑誌「野球小僧」「野球太郎」の編集部員を経て、15年4月からフリーライターに。ドラフト候補の取材をメインに活動し、ツイッター上で「大谷翔平」とツイートした最初の人物(10年10月8日)。野球部員の生態を分析する「野球部研究家」としても活動しつつ、さまざまな媒体で選手視点からの記事を寄稿している。著書にあるある本の元祖「野球部あるある」(集英社)などがある。ツイッターアカウント:@kikuchiplayer

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