西武・山川が呼ぶ“言霊弾” CS理想は「ピッチャーが抑えて、僕が一撃で決める」

[ 2022年10月6日 06:30 ]

西武・山川はCSに向けた意気込みの一文字を筆で「撃」としたためた
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 狙うは「言霊アーチ」の再現だ。41本塁打、90打点でパ・リーグ2冠王の西武・山川穂高内野手(30)がスポニチ本紙の単独インタビューに応じ、8日開幕のクライマックスシリーズ(CS)へ抱負を語った。まずはファーストSで打倒・ソフトバンクに挑む。CSは過去12試合で3本塁打、打率・325、5打点と好相性の主砲は、「4番論」にも言及した。(聞き手・神田 佑)

 ――プロ9年目で初の敵地でのCS。ファーストSの舞台、ペイペイドームでは今季5本塁打、打率・333の好成績だった。

 「ペイペイドームはホームランも入りやすい。僕はホームランとヒットの打ち方は基本的に一緒。なので、ホームランを狙います」

 ――18、19年はリーグ連覇しながらもCSで敗退した。

 「凄い悔しかったですね。1位だった時はクライマックスシリーズはいらないと思っていました。正直、日本シリーズ直結がよかった。今回は3位なので挑戦者。失うものがない状況。下克上を目指しますけど、僕の中ではまだ野球ができる喜びが大きい。真剣勝負の場所にまだ立てる」

 ――18年は辻監督の悔し涙を目の当たりにした。

 「僕も感情的に言えば悔しかった。一方で冷静に“負ける”とか“打てない”のは必ず技術的な理由がある。それが何だったんだろうと凄く考えました」

 ――本塁打した試合は14戦全勝と「不敗神話」を6月まで継続。最終的に30勝7敗で勝率・811と勝利に直結する打撃をした。

 「でも優勝できていません。優勝に導くのが4番。打っている時は“俺が勝たせる”くらいの気持ち。勝てない時は“4番のせい”。それが4番の宿命」

 ――今季は出場した全129試合で4番を務めた。自身にとって理想の4番像は。

 「ここ何年かで4番という感じなのは、今年の村上君(ヤクルト)じゃないですかね。あいつは人間じゃないんで。化け物です。村上くらいの数字を出して真の4番だと思う」

 ――技術的には村上のどこが凄いのか?

 「同じスイングをすること。これに尽きる。再現性。実は物凄く難しいことです。年間通すと疲れもある。毎日ピッチャーが変わろうと、チームが変わろうと、球場が変わろうと、同じスイングができたこと。技術も凄いですし体力も凄い」

 ――4番としてのCSへの意気込みは。

 「短期決戦は勝てばいい。シーズンの方が自分の数字と戦うのできつい。短期決戦は凄く楽に考えられる。アマチュア時代の感覚で必死にやります」

 ――勝ち方はイメージしている?

 「ピッチャーが抑えて、僕が一撃で決めるというのが理想。ホームランを狙います」

 ――1日のソフトバンク戦で藤井からサヨナラ本塁打し、目の前での胴上げを阻止。同打席はバットを指1本分短く持っていた?

 「9月に入ってかなり状態が落ちてしまったので試行錯誤しました。大学生の時から左手の小指をグリップにかけて持っているんですけど、捕手にバレないように1、2センチ短く持って対応しました」

 ――CSでも試す?

 「とりあえず考えていないです。まずは自分のスタイルでいくべき。千賀の160キロを見て、無理だと思ったらやります(笑い)」

 ――シーズン最後の5連勝は円陣で声出しを担当。先発全員安打や本塁打などを予告して、有言実行したが?

 「次は源田を指名しましょうか。試合前に何をしゃべろう、とか考えたくないので…」

 ――「言霊」が乗り移った活躍だった。

 「自分にできる現実的なことを言うのが言霊。ダイエットの時とかいいですよ。人に言った方が逃げられない状況になる(笑い)」

 ――CSに向けた「予告」をしてほしい。

 「ソフトバンクやオリックス相手になかなか打ち勝つというのは考えづらい。ホームランを打って、それより低い点数で守り勝ちます」

 ≪本塁打で勝率8割超≫山川(西)は今季41本塁打を放ち自身3度目の本塁打王を獲得。山川が本塁打した試合にチームは30勝7敗(勝率.811)と勝利に結びつくケースが目立った。セでは村上(ヤ)が日本選手最多の56本塁打でキングとなったが、チームは30勝12敗1分け(勝率.714)。一発が出た試合でのチーム勝率なら山川が上回った。また、山川は17~19年にCS通算12試合で40打数13安打(打率.325)、3本塁打、5打点。本塁打は18年ファイナルS第1戦バンデンハーク、同第3戦千賀、19年ファイナルS第4戦石川と全てソフトバンク戦でマークしている。

 ▽山川の言霊 試合前の円陣で務めた声出しでの発言がことごとく現実になった。9月24日の日本ハム戦は「先発野手全員安打」を宣言し、8回に自身の右中間適時二塁打で決めた。同27日のソフトバンク戦は「今日はホームラン打ちます!」と言い初回に2ラン。同28日楽天戦は「今日はやる前から勝ってるんです」と鼓舞して勝った。1日のソフトバンク戦は「3点取る」で、1―1の延長11回に自身初のサヨナラ弾。2ランで計3点とし、自身も辻監督も「本当に言霊がある」と驚いていた。

 【取材後記】CSに向けた意気込みを表す言葉を、毛筆で本紙に寄せてもらった。山川が達筆でしたためたのは「撃」の文字。「短期決戦は勝てばいい」という思いから「打」ではなく、勝利する決意を込めて「撃」にした。

 インタビューは当初、練習後の10分間を予定していた。歯医者さんの予約があるということで記者が球団側と相談して時間を設定したのだが、山川は「いいですよ、時間あるので。なんぼでも聞いてください」と予約の時間をずらして対応してくれた。サービス精神旺盛。バットを手に持って握り方も丁寧に解説してくれた。治療した歯を食いしばり、上位チームを撃つ。(西武担当・神田 佑)

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