【スポニチスカウト部(26)】日本文理・田中晴也 雪辱期す二刀流の原石

[ 2022年8月16日 06:30 ]

日本文理・田中
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 今秋のドラフト候補となる選手にスポットを当てる「スポニチスカウト部」。アマチュア担当記者の独自目線による能力分析とともに、選手たちの素顔を紹介する。第26回は日本文理の田中晴也(はるや=3年)。投げては最速150キロ、打っては高校通算20本塁打の大型二刀流。強豪大学、プロ球団が注視している。

 12球団のスカウトが集結し、全国の強豪と激突する甲子園。ドラフト候補の力量を測る上で最高の舞台だ。しかし、田中は2度出場を果たした聖地で、本来の姿を示すことなく高校野球生活を終えた。今夏は海星(長崎)戦に先発し6回を8安打7失点でKO。初戦敗退に「勝てるという自信を持って臨んでいたので、悔しいという気持ちが一番」と絞り出した。

 1メートル86、92キロの巨体を感じさせない、しなやかなフォームから最速150キロ。打撃では3番を担い、右に左に長打を連発。ドラフト1位候補に目される田中だが、今夏は評価を上昇させることはできなかった。理由は明確。ある「故障グセ」にある。新潟大会準決勝の北越戦では右人さし指の皮が破れ、緩いスライダー中心の配球にシフトチェンジ。11回を1失点に抑え「どんな場面でも臨機応変に対応できるところが自分の特長」と言ったが、甲子園でも再発した。

 初回に148キロを計測した直球。再び右人さし指の皮が破れると、5回には140キロを下回ることもあり「5、6回くらいから悪化し始めた」と肩を落とした。2年夏は敦賀気比(福井)との初戦で先発し8回を15安打8失点。2年連続悔しい夏となるも「去年にはない楽しさを感じた」と甲子園に笑顔で別れを告げた。

 だが、全国舞台での「不発」は、バックネット裏で視察した12球団にとって決して大きなマイナスポイントにならない。肩、肘とは異なり、後遺症が残らない指の「故障グセ」であり、上位進出により多くの球数を投げることもなかった。注目の進路については「自分に合った一番良い選択をしたい」と明言を避けた田中。今年のドラフト会議は10月20日に開催。「未完の大器」の進路はいかに…。

 ≪日体大・矢沢、早大・蛭間らドラ1は大学生中心か≫今年のドラフト1位指名は、大学生が中心になることが予想される。投打でアマチュアトップレベルの実力を持つ日体大の二刀流左腕・矢沢宏太投手、早大のスラッガー・蛭間拓哉外野手、白鴎大の大型左腕・曽谷龍平投手らが軸。高校生では高松商の長距離砲・浅野翔吾外野手はスカウトからも「1位じゃないと獲得できない」と声が上がった。田中と同カテゴリーとなる高校生の投手は、上位候補に挙がる選手が少ない。苫小牧中央の斉藤優汰は1メートル89の長身から最速151キロ。盛岡中央の最速152キロ右腕・斎藤響介は今夏で評価が急上昇した。

 ☆球歴 小2から、赤城ベースボールクラブで野球を始める。長岡南中では軟式野球部に所属。3年時には県選抜に選ばれ、全国大会で3位に。日本文理では1年秋からベンチ入り。

 ☆指導者 元ヤクルト・本間忠投手コーチが指導し「のみ込みが早いので教えていて楽しい」と語る。

 ☆注目度 春の県大会には全12球団のスカウトが集結した。

 ☆スカウト評価 ロッテ・榎康弘スカウト部長は「ここという時の球の強さは魅力。強弱をつけてゲームメークができる」。

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