【スポニチスカウト部(15)】明星大・谷井 肉体改造で「無名の右腕」開花

[ 2022年5月31日 06:30 ]

150キロを目指す世代最速右腕の谷井
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 今秋のドラフト候補となる選手にスポットを当てる「スポニチスカウト部」。アマチュア担当記者の独自目線による能力分析とともに、選手たちの素顔を紹介する。第15回は首都大学リーグ2部に所属する明星大の最速159キロ右腕・谷井一郎投手(21)。高校、大学で全国大会に出場経験がない「無名の剛腕」がプロ入りを狙う。

 豪快に左足をはね上げる。爆発的な力を生む谷井の投球フォーム。メジャー通算324勝のノーラン・ライアンか、令和の怪物・佐々木朗希を思わせるダイナミックさ。世代最速とされる159キロの直球を誇る剛腕が、2部リーグからスターの道を駆け上がる。

 「球速だけで言ったらプロにも負けていないと思います。100マイル(約161キロ)はずっと意識している」

 「イチロー」の名を持つ右腕。谷井が生まれた01年にメジャー挑戦したマリナーズ・イチローはア・リーグMVPに輝いた。父の母国であるパラグアイでは、親戚が命名する風習があり谷井はいとこから日本野球界のレジェンドに由来して「一郎」と名付けられた。
 左足を高々と上げるフォームは、都武蔵村山3年時から取り組んだ。「自分のルーツは南米にある。中南米の投手をマネしてみよう」とメジャー選手の投球フォームを参考にした。「骨盤ごと足を上げるイメージ」で左足を上げるようにフォームを改良し、試行錯誤を繰り返した。

 明星大進学後はウエートトレーニングに取り組み、体脂肪率を6%ダウンの14%まで下げ筋肉質の肉体をつくり上げた。高校時代は147キロだった最速は大学3年時に150キロの大台を突破。同年秋に159キロを計測した。急成長を見守ってきた浜井名誉監督は「プロが育てたら160キロは絶対に出る。夢といっても現実になる夢だ」と右腕の将来性に期待を寄せた。

 1部昇格を狙った春季リーグは惜しくも3位で終幕。プロ入りが懸かる秋季リーグは引き続き2部でプレーすることになるが「入れ替え戦で勝って1部昇格が目標。個人的には圧倒的なピッチングを見せたい」と闘志を燃やしている。 (柳内 遼平)

 《30球連続「ボール」転機 フォーム修正し急成長》明星大で制球力も急成長した。谷井は2年春に、都市対抗で優勝経験のある社会人野球チームの練習に参加。ブルペンで自慢の速球を投げ込むも30球連続で「ボール」が続いた。苦い思い出を転機にフォーム改造に着手。従来は投手板の三塁側に立ってスリークオーターから投げ込むフォームだったが、投手板の真ん中に立って真上から投げ下ろす形に変えた。浜井名誉監督は、ブルペンの投手板から本塁までラインカーで白線を引いて真っすぐ投げ込む感覚を覚えさせた。ボールはストライクゾーン内で適度に暴れるようになり、3年春にはリーグ戦デビューを果たした。

 ☆球歴 幼稚園年中から野球を始める。中学時代は福生シニアでプレー。都武蔵村山では1年夏からベンチ入りし、2年秋から背番号1。 

 ☆球種 2種類のカーブ、カットボール、チェンジアップ。

 ☆身体能力 50メートル走6秒8、遠投125メートル。

 ☆好物 母が作るパラグアイ料理・ソパ(トウモロコシを使ったパンケーキに似たような食べ物)。

 ☆好きな歌手 米・ヒップホップトリオ「ミーゴス」。カラオケでは英語で美声を披露。

 ☆映画マニア オフは週1本映画を観賞。オススメは「インターステラー」「オブリビオン」。「トム・クルーズは常に要チェックです」と目を輝かせる。

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2022年5月31日のニュース