大リーグのロックアウトは終わらなかった NY現地リポート 17時間後の午前3時に無情通告

[ 2022年3月9日 21:09 ]

交渉場所の一つとなったニューヨークの選手会本部(撮影・杉浦大介通信員)
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 労使対立で開幕延期が決まっている大リーグは、8日の午前10時(日本時間9日午前0時)から9日の午前3時(同9日午後5時)まで、17時間にもわたってニューヨークで機構(MLB)と選手会が交渉を行ったが、新労使協定で妥結には至らなかった。本紙の杉浦大介通信員(46)が現地をリポートした。

 
 米国東部時間8日(日本時間9日)の午後2時8分。ニューヨーク州マンハッタンの選手会本部に大リーグ機構(MLB)側の交渉担当であるダン・ハレム副コミッショナー、モーガン・ソード氏、パット・フーリハン氏ら4人が姿を見せ、「運命の1日」が始まった。
 現地メディアによると、選手会側は午前10時には早くもMLBオフィスを訪れ、話し合いを始めていたという。レギュラーシーズン162試合制を保つための交渉期限とされた瀬戸際の8日。両サイドは文字通り1日中、交渉を続けた。

 MLBの交渉担当が巨大ビルの24階に上がったあと、入り口に陣取っていた取材陣もエレベーターで上階に上がることが許された。通されたロビーには、限られた数ながらイスと電源がある。水、菓子パンが振る舞われ、選手会本部のトイレも使用できた。

 午後2時に選手会本部に集まったのは記者を含め7人程度。本格的な交渉開始の知らせがSNSなどで流れたあと、記者の数は続々と増えていった。「AP通信」、「スポーツ・イラストレイテッド誌」、「ニューヨーク・タイムズ」「ニューヨーク・ポスト」、「ワシントン・ポスト」、「ESPN」「ヤフースポーツ」といった大手媒体がそれぞれエース級を送り込んだのに加え、「ジ・アスレチック」は看板記者のケン・ローゼンタール氏、労使問題に強いエバン・ドレリッチ氏ら3人の記者を動員。最高で約20人が集結し、米球界を揺るがす労使交渉問題に対する関心の大きさが感じられた。

 だが、すぐに劇的な出来事が起こったわけではない。MLBの交渉担当4人はわずか20分ほど滞在しただけで、午後2時30分ごろには選手会本部を去っていった。以降、両サイドは電話とメールで長い交渉を続けた。午後8時になると、数ブロック先の距離にあるMLBのオフィスビルに移動。その後、ロビーで、テークアウトの夕食をとりつつ、ひたすら「新労使協定締結」の朗報を待ち続けた。
 交渉に進展ありという話は断片的に届いていた。終わりは見えている。それでも「ロックアウト解除」という待望のニュースがなかなか届かないのがもどかしかった。中には手品を披露して周囲を楽しませる元気な記者もいたが、交渉が長引き、深夜が近づいた頃にはもう誰もが疲労を隠しきれなかった。何人かの記者は帰路につき、ロビーのいすで居眠りを始めるものもいた。

 ついに動きがあったのは、交渉開始から17時間が経過した午前3時。MLBの担当者が状況説明のためにロビーに姿を現し、「話し合いは翌朝も続きます」と無情の言葉を発した。ロックアウトは終わらなかった。最後の最後で強烈な徒労感を感じながら、翌朝の交渉再開まで束の間の休息を取るべく、MLBオフィスをあとにした。(杉浦大介通信員)

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