DeNA打線を支える裏方の物語

[ 2022年2月20日 09:00 ]

宜野湾キャンプで打撃投手を務めるDeNA・三橋打撃投手
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 あれは昨夏の暑い日だった。DeNAの球団関係者が個人のスマートフォンを使い、試合前の打撃練習を動画におさめていた。「強力打線の打撃練習は見ていて面白い。それを撮っている」。記者は関係者の言葉を額面通りに受け取ったが、実際は違った。狙いは打撃投手。フォームチェックのための撮影だった。

 DeNAと言えば最新機器を駆使した選手動作解析などが特徴。ならばスマートフォンなど使用せずとも、高性能機器でフォームチェックはできるでしょ?。この記者の考えもまた、違った。打撃投手陣の一致した考えは「機器は選手のために使用するもの」。貴重な機会を奪うことはできない。だからスマートフォンを使用する。

 グループリーダーの三橋直樹打撃投手は「昨年4月ですね。スマートフォンの映像が手軽で新鮮で。何で今ままでやらなかったのかなと。投げると緊張するんです。打者に迷惑をかけたくない。でもフォーム崩れはある。凡打が続くと“やばい”と思う。逆に打たれると乗る。スマホで確認。それだけでも大きい」と明かした。

 1軍打撃投手は総勢8人。投じる選手は日によって違うが、シーズン中は毎試合本拠地では約100球を投げる。そして登板後はアイシングもせず、スコアラー業など別の仕事を行う。まさに縁の下の力持ち。三橋打撃投手は「投げるのは毎日、自転車に乗っているような感覚。この打線に携わっているのはうれしい。今、41歳。60歳でも続けたい」と言う。

 98年に「マシンガン打線」で日本一に輝いたように、過去も現在も打線がチームカラー。未来も、きっと打線は強力だろう。強力打線を支えているのは、決してコーチや選手だけではない。「打たれる」ことが仕事の男たちも、歴史をつないでいる。(記者コラム・大木 穂高)

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2022年2月20日のニュース